武王 (百済)

武王について

武王（ぶおう、580年? - 641年）は、百済の第30代の王として600年から641年まで在位した。彼は第29代王法王の子であり、また『北史』には第27代の威徳王の子として記述されている。武王の名は璋とされ、別名には武康や献丙、余璋が伝わっている。彼の治世は激動の時代であり、朝鮮半島内での三国間の争いが特に厳しかった。

治世の背景

武王が治世を務めていた当時、百済、新羅、高句麗の三国は争いを深めていた。特に高句麗への対抗のため、隋帝国の介入を求める動きも活発だった。武王は607年および608年に隋に朝貢を行い、高句麗の討伐を願う上表文を提出している。また、611年には隋が高句麗を攻めるとの情報を受け、先導を引き受ける意向を示した。

しかし、武王は高句麗との外交関係も維持しており、612年に隋が高句麗に攻撃を仕掛けた際には百済が軍事的に隋を支援することはなかった。新羅との関係も不安定で、602年には武王が新羅の阿莫山城を包囲しようとしたが、大敗してしまった。611年には椵岑城を占拠し、616年にも母山城を攻撃したものの、618年には新羅に椵岑城を奪還され、その後も小競り合いが続くこととなった。

隋滅亡後の状況

隋が滅亡し、唐が興ると、武王は621年に唐に朝貢し、624年には「帯方郡王・百済王」に冊封された。626年には高句麗との和親を結び、新羅への攻撃を続けた。627年には新羅の西部2城を奪取し、大軍を編成して熊津に兵を集めたが、新羅の真平王は唐に仲裁を依頼し、それに応じて武王は甥の鬼室福信を唐に派遣した。

このように武王の時代には新羅との紛争が絶えず続いた。634年には、父の法王が設立を開始した王興寺を完成させ、さらに弥勒寺を建立。彼の治世は42年続き、641年3月に亡くなると、武王として追悼された。唐に使者を派遣し、その死を告げると、唐の太宗は悲しみの儀を行い、武王に光禄大夫の爵位が追贈された。

薯童説話

武王には様々な伝説が存在し、その中でも『三国遺事』にまとめられた薯童説話が有名である。この説話では彼が古朝鮮の武康王と混同されるなど、多くの伝承が複合して形成されている。具体的には、新羅との通婚や彼の治世における弥勒寺の創建との関連が記されている。

家族

武王の家族構成も興味深い。父は第29代王法王であるが、母親の名は不詳である。妻には新羅王の真平王の三女である善花公主があり、他にも百済貴族の沙宅積徳の娘である沙宅王后が存在した。武王の嫡男である義慈王は第31代国王であり、さらには子供たちの中に翹岐とその同母姉妹が4人いたという情報も伝わっている。

このように武王の時代は政治や文化面で影響を与え、多くの逸話を残している。彼の治世は、百済の歴史において重要な位置を占めているのである。

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