武王 (秦)

秦の武王：短命に終わった剛力の君主

武王（ぶおう）は、中国の戦国時代の秦の第27代君主であり、第2代の王です。恵文王の子として生まれ、その跡を継ぎましたが、在位期間は短く、その生涯は意外な形で幕を閉じました。

即位と初期の政策

恵文王14年（紀元前311年）に父が没すると、太子であった蕩（とう）が即位し、武王となりました。彼は父の代からの臣下をそのまま用い、司馬錯（しばさく）に楚を討たせ、商・於の地を奪い、黔中郡を設置するという成果を挙げました。しかし、武王は太子の頃から張儀（ちょうぎ）と不仲であり、群臣は張儀を讒言するようになりました。そのため、諸侯は張儀と武王の関係が悪いと知ると、再び合従策を画策するようになりました。

武王は魏の恵王と会合したり、蜀の国相の反乱を鎮圧するなど、即位後も積極的に活動しました。また、秦に初めて丞相を設置し、樗里疾（ちょりしつ）と甘茂（かんぼう）を左右の丞相としました。さらに、農田と道路の制度を詳細に規定する為田律（いでんりつ）を定めるなど、内政にも力を注ぎました。

宜陽の戦い

武王は、甘茂に「兵車を三川に入れ、西周室をおびやかして天下に号令したい」と語り、甘茂に韓の重要拠点である宜陽（ぎよう）を攻めさせました。甘茂は、樗里疾や公孫衍らが韓に好意的である事を懸念し、武王に彼らを信用しないように進言しました。武王は甘茂の言葉を聞き入れ、宜陽攻略を命じました。

宜陽の戦いは難航し、5ヶ月経っても攻略できませんでしたが、武王は甘茂を信じ、再度攻撃を命じました。遂に甘茂は宜陽を攻略し、6万の首を討ち取るという大戦果を挙げました。しかし、この戦いは秦にも大きな疲弊をもたらしました。

事故死と後継者争い

武王は力自慢を好み、任鄙（じんぴ）や烏獲（うかく）といった大力の持ち主を重用しました。武王4年（紀元前307年）には、洛陽を訪れた際に孟賁（もうほん）という大力の持ち主と鼎（かなえ）の挙げ比べを行い、脛骨を折って死去しました。享年23歳という若さでした。

武王には子がなかったため、後継者争いが勃発しました。その結果、燕にいた異母弟の公子稷（こうししょく）が即位し、昭襄王（しょうじょうおう）となりました。武王は永陵に葬られました。

武王は短命でしたが、その在位期間中に領土を拡大し、内政を整備するなど、秦の発展に貢献しました。しかし、彼の剛力ぶりを示すエピソードが、その短い生涯を象徴していると言えるでしょう。

まとめ

武王は、秦の領土拡大と内政改革に貢献した君主でしたが、力自慢が原因で事故死するという、劇的な最期を迎えました。彼の死後、秦は昭襄王の時代にさらなる発展を遂げることになります。

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