武田信廉

武田信廉：知略に長けた武田家の重鎮

武田信廉（たけだ のぶかど）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、甲斐武田氏の一族です。武田信虎の六男として生まれ、兄である武田信玄を支え、その生涯を武田家のために尽くしました。一般には逍遙軒（しょうようけん）の名で知られています。

生涯

天文10年（1541年）、兄・晴信（後の信玄）が父・信虎を追放し家督を継承。信濃侵攻を本格化させます。信廉が歴史に登場するのは、晴信が諏訪統治を確立しつつあった天文17年（1548年）のことです。諏訪衆に対する取次役として、武田方に謀反を起こした勢力の追放と所領没収を伝え、知行増加を約束するなど、交渉役として活躍しました。また、天文20年（1551年）には、晴信の命により、駿河・今川義元の娘を義信の正室に迎える旨を伝えています。

『甲陽軍鑑』によれば、信廉は80騎を指揮し、武田一族の中でも重要な地位を占めていました。永禄4年（1561年）の第4次川中島の戦いで兄・信繁が戦死すると、親族衆の筆頭となり、後方守備や本陣守護などを務めました。元亀元年（1570年）には信濃・高遠城主に任じられ、地域の安定に貢献します。

元亀4年（1573年）に信玄が死去した後は、一族の重鎮として飯田城代や大島城代などの要職を歴任。信玄の死後に帰国を望んだ父・信虎を高遠城に住まわせ、「信虎像」を作成したことでも知られています。天正3年（1575年）の長篠の戦いでは、中央隊に布陣し奮戦したとされています。

天正10年（1582年）の甲州征伐では、織田信忠率いる織田勢の侵攻に対し、大した抵抗もできずに大島城を放棄し甲斐へ退却。その後、織田軍の残党狩りによって捕らえられ、同年3月24日に甲斐府中で処刑されました。享年51。

人物・逸話

信廉は画家としても才能を発揮し、「武田信虎像」や「武田信虎夫人像」などの肖像画を残しています。これらの作品は現在も重要文化財として大切に保存されています。また、信玄が家臣団から起請文を提出させた際、信廉直筆のものが現存しており、彼の筆跡を今に伝えています。

『甲陽軍鑑』には、信廉が信玄の影武者を務め、側近ですら見分けがつかなかったという逸話が記されています。信玄の死を隠すために信玄に成りすまし、軍を甲府へ撤退させることに成功。北条氏政が信玄の死去を確かめるために派遣した使者・板部岡江雪斎を欺いたという逸話も残っています。

武田信廉は、武将としての能力だけでなく、文化的な才能にも恵まれた人物でした。兄・信玄を支え、武田家のために尽くしたその生涯は、多くの人々に感銘を与え続けています。

登場作品

影武者（1980年東宝映画、演：山﨑努）
武田信玄（1988年、NHK大河ドラマ、演：篠塚勝）
信長 KING OF ZIPANGU（1992年、NHK大河ドラマ、演：黒部進）
風林火山（2007年、NHK大河ドラマ、演：松尾敏伸）
信虎（2021年、ミヤオビピクチャーズ、演：永島敏行）
小説: 伊東潤『画龍点睛』（『戦国鬼譚　惨』収録の短編）

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