武田信正

武田信正：武田信玄の血を引く数奇な運命を辿った武士

武田信正（たけだ のぶまさ）は、江戸時代前期に生きた人物で、武田信道の子として生まれました。彼は、戦国時代の名将・武田信玄の曾孫にあたる血筋を受け継いでいます。

大久保長安事件と伊豆大島への配流

慶長18年（1613年）、武田信正は、大久保長安の死後に発覚した大久保長安事件に連座し、父である信道とともに松平康長に預けられるという不遇に見舞われます。その後、元和元年（1615年）には、伊豆大島への配流を命じられ、同島の野増に居を構えることとなりました。

父である信道が亡くなった後も、信正は赦免されることなく、島での生活を余儀なくされました。

赦免と江戸への帰還、そして高家武田家の成立

しかし、上野寛永寺の公海の奔走などもあり、寛文3年（1663年）3月、徳川家光の十三回忌という節目に、ついに赦免が叶い、江戸へ戻ることができました。帰還後、信正は磐城平藩主の内藤忠興に迎えられ、忠興の娘（母は小山田信茂の娘である香具姫）を妻としました。そして、2人の間に生まれた子、信興は高家に列せられることとなります。

武田信正の系譜

父：武田信道
母：林称院（浅野家家臣・森島新吾の娘、満々）
正室：内藤忠興の娘
子：武田信興
側室：富士井氏
子：大島信冬
子：西川信重
子：渡邊信證

信正は、伊豆大島在島中に、家臣である富士井丹波の孫娘との間に、信冬、信重、信證の3人の子をもうけました。長男の信冬は、家臣の大島家を相続し、米倉氏に仕えました。次男の信重は、家臣の西川家を相続し、その子孫は代々高家武田家に仕え、明治維新後に武田姓に復しました。三男の信證は、家臣の渡邊家を相続しましたが、その子孫は絶えてしまったとされています。

武田信正を研究するための参考文献

「武田古蹟考」（東京大学史料編纂所）
「武田由来書」（東京大学史料編纂所）

武田信正は、激動の時代を生き抜き、武田家の血脈を後世に伝える役割を果たしました。彼の生涯は、歴史の波に翻弄されながらも、力強く生きた一人の武士の姿を私たちに教えてくれます。

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