内藤忠興

内藤忠興は、1592年（天正20年）に内藤政長の長男として誕生しました。父・政長は徳川家康の家臣であり、後の磐城平藩の初代藩主です。忠興は幼少の頃から血気盛んな性格で知られていました。

1614年（慶長19年）の大坂冬の陣では、父と共に安房国での留守を命じられますが、彼はこれを無視し、独断で手勢を率いて伏見城に参じました。そこで、家康の側近であった本多正信に参陣を懇願し、その熱意が認められ、井上正就の配下として参戦を許されました。この大胆な行動は、彼の勇猛さを物語っています。

翌1615年（慶長20年）の大坂夏の陣では、酒井家次に従い武功を挙げ、その功績により1万石を加増されました。さらに、父・政長が磐城平藩に移封された際、忠興は陸奥国泉藩に2万石を領する大名となりました。1634年（寛永11年）に父が亡くなると、忠興は家督を相続し、泉藩は弟の政晴に譲られました。

藩主となった忠興は、藩政に尽力しました。新田開発や検地などの農業政策を積極的に推進し、また厳格な税徴収を行い、藩の石高を実質的に2万石も増加させることに成功しました。これらの政策は、磐城平藩の財政基盤を大きく強化しました。

1670年（寛文10年）に長男の義概に家督を譲り隠居しましたが、その後の1674年（延宝2年）に83歳で亡くなりました。

忠興には、恐妻家としての逸話が残されています。正室は酒井家次の娘で、気が強い女性でした。ある時、忠興が正室に内緒で美女を呼び寄せたところ、正室は激怒し、薙刀を振りかざして忠興を追い回したそうです。この事件以来、忠興は女性関係を慎み、藩政に関しても正室の意見を聞くようになったと伝えられています。

また、江戸在府中の忠興が、国元から取り寄せた大根の漬物に対して、何度も細かな注文を付けていたという逸話も残っています。彼は「塩辛くない浅漬け」や「塩辛くなくシワがあるように漬けて」などと要求しましたが、なかなか満足のいく漬物が送られてこなかったため、怒ったという記録が残っています。この古文書は現在、明治大学博物館に保管されています。

内藤忠興は、武勇に優れ、藩政にも手腕を発揮した一方で、家庭では恐妻家であったというギャップが魅力的な人物です。彼の生涯は、戦国時代から江戸時代への移行期における大名の姿を映し出しています。

系譜

父母
内藤政長（父）
三宅康貞の娘（母）
正室
酒井家次の娘
側室
天光院殿、香具姫 ー 小山田信茂の養女
子女
内藤義概（長男）
遠山政亮（三男）
武田信正正室
美興
土方雄次正室
本堂栄親正室
養女
堀直景継室 ー 西尾光教の娘
* 諏訪忠晴正室

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