松平康長

松平康長：徳川家康に信頼された武将

松平康長（まつだいら やすなが）は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将であり、大名です。徳川氏の家臣であり、戸田宗家16代当主、官位は従四位下・丹波守。松平の名字を許され、戸田松平家の祖となりました。

生涯

戸田忠重の長男として三河国に生まれ、戸田氏の嫡流を継ぎました。叔父の戦死により、主君である徳川家康の命でその跡目を継ぎ、元服の際に家康から「康」の字を与えられ、康長と名乗るようになりました。さらに、家康の異父妹である松姫と結婚し、松平姓を授けられたとされています。

初陣は、天正9年（1581年）の武田家との戦いでした。その後、小牧・長久手の戦い、小田原征伐など数々の戦で武功を上げました。特に小田原征伐では、上野白井城を落とすという大きな功績を挙げました。徳川家の関東移封に伴い、武蔵国東方1万石を領有することとなり、その後も各地を転々としました。

関ヶ原の戦いでは、大垣城攻略に貢献し、その功績から上野白井藩、下総古河藩、常陸笠間藩などを経て、最終的には信濃松本藩7万石を与えられました。大坂の陣にも二度従軍し、その戦功によって上野高崎藩5万石、そして信濃松本藩へと加増移封されました。

松本藩主時代には、家臣団の再編、城下町の建設、行政区画の整理など、藩政の安定化に尽力しました。特に、中世以来の郷の大村を廃止し、小規模な行政村を創設したことは、後の藩政に大きな影響を与えました。また、徳川家光の守役として江戸城西の丸の警護を務めるなど、幕府からも厚い信頼を得ていました。

寛永9年（1632年）、信濃池田城を隠居城とする予定でしたが、松本で亡くなりました。その際、家光から侍医が派遣されるなど、その信頼の厚さが窺えます。松本神社には祭神の一柱として祀られ、子孫によって北海道雨竜神社にも祀られています。

人物

康長は、実直で穏やかな人柄で知られ、家康、秀忠、家光の三代にわたり、厚い信頼を受けていました。数々の戦で功績を挙げながらも、自ら恩賞を求めることはなく、その謙虚な姿勢は家臣たちをも感銘させました。また、陸奥仙台藩主伊達政宗とも親交が深く、互いに信頼し、何でも語り合える間柄でした。

家臣との間でも、分け隔てなく接し、夜分にも迎え入れて酒食を共にしながら、藩政や武芸について語り合ったと伝えられています。このことからも、康長の温厚で誠実な人柄が窺えます。

系譜

父: 戸田忠重
母: 戸田吉光の娘
正室: 松姫（徳川家康の養妹、久松俊勝の娘）
側室: 稲村氏、高田氏
子女:
松平永兼（長男）：母は松姫
松平忠光（次男）：母は稲村氏
松平庸直（三男）：母は高田氏
諷（長女）：戸田氏鉄正室、母は松姫
（次女）：松平乗寿正室、母は稲村氏
* （三女）：阿部忠秋継室

現在の皇室は、松平康長の子孫にあたります。

脚注

田中薫『松本藩』現代書館〈シリーズ藩物語〉、2007年5月。

松平康長は、戦国時代から江戸時代初期にかけて、武将として、大名として、そして人として、多くの人々に影響を与えた人物でした。

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