武田孟

武田孟：学生野球の父、そして教育者

武田孟（1896年～1990年）は、日本の教育史、そして学生野球の歴史にその名を刻んだ偉大な人物である。明治大学で野球部長、学長、総長を務め、さらに札幌大学学長も歴任。広島県広島市に生まれた彼は、第四仏教中学（現：崇徳学園）卒業後、明治大学に進学した。

明治大学在学中の1920年、大学レガッタの惨敗など大学が混乱の渦中にあった中、武田は牛尾哲造、越智七五三吉らと共に、今なお明治大学を象徴する校歌「白雲なびく駿河台」の制定に尽力した。卒業後の1936年、明治大学商学部教授に就任。教壇に立ちながら、大学体育会ヨット部初代部長や硬式庭球部長を歴任するなど、学生スポーツにも深く関わっていった。

1952年、教え子の島岡吉郎が野球部監督に就任した際、武田は野球部長に就任する。島岡は学生時代は応援団長であり、野球の専門家ではなかったため、この人事に当初は主力選手らの反発もあった。しかし、武田は島岡を支え、翌1953年春、11年ぶり、戦後初の明治大学野球部の優勝に貢献した。

1958年、明治大学学長に就任。学長職を務めながらも野球部長を続け、明治大学野球部の黄金時代を築き上げた。全日本大学野球選手権大会での連続優勝など輝かしい実績を残した。同年から1964年までは、全日本大学野球連盟会長、東京オリンピック野球競技（公開競技）運営本部長を務めた。

1964年には、明治大学総長に就任すると同時に、第4代日本学生野球協会会長に就任。実に20年間もの長きにわたり同職を務め、学生野球の普及と発展に多大な貢献をした。その間、日本の大学野球の国際化をいち早く見据え、長年の懸案であった日米大学野球選手権大会を実現させた（1972年）。

甲子園大会の開会式では40回にわたり祝辞を述べたが、「甲子園」と呼ぶべきところを「神宮球場」と言ってしまったという逸話も残っている。

1964年から1968年まで明治大学総長を務めた後も、教育者としての活動は続いた。札幌大学設置にも尽力し、1968年から1970年、そして1979年から1986年まで札幌大学学長を務めた。現在、札幌大学図書館には武田の蔵書を収めた「武田文庫」が残されている。

1967年には勲二等旭日重光章を受章。1990年、94歳で生涯を閉じた。その功績は死後も高く評価され、2001年には学生野球への貢献により野球殿堂入りを果たした。

武田孟は、教育者として、そして学生野球界の指導者として、日本のスポーツ界、そして教育界に大きな足跡を残した稀有な存在であった。彼の功績は、これからも長く語り継がれていくことだろう。

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