武田徹

武田徹（たけだ とおる）氏は、1958年生まれの日本の評論家、ジャーナリスト、そして大学教授です。専門はメディア社会論、共同体論、産業社会論に及び、現代社会が抱える様々な問題を多角的に分析・考察しています。

東京都に生まれ、東京都立富士高等学校を経て、国際基督教大学人文科学科を卒業。さらに同大学院比較文化研究科博士課程を単位取得退学しています。大学院在学中から、雑誌『週刊文春』や『諸君!』などで評論や書評を手がけ、本格的な文筆活動に入りました。1984年には二玄社に嘱託社員として入り、自動車雑誌「NAVI」の編集部に籍を置くなど、多様な経験を積んでいます。

その著作は非常に多岐にわたり、歴史上の出来事（偽満州国、ハンセン病問題）から現代社会のテクノロジー（核技術、インターネット）、そして社会現象（流行、メディア）まで、幅広いテーマを扱っています。代表的な著作としては、偽満州国建国の思想背景を探った『偽満州国論』、近代日本の隔離政策を問うた『「隔離」という病い』、原子力エネルギー問題を論じた『「核」論』などがあります。中でも、流行現象を社会学的視点から読み解いた『流行人類学クロニクル』（1999年）は、2000年にサントリー学芸賞（社会・風俗部門）を受賞するなど、その独創的な視点が高く評価されました。

また、ジャーナリズムの機能や役割についても積極的に発言しており、関連する著作も数多く発表しています。2003年からは東京大学先端科学技術研究センターの特任教授として、ジャーナリスト養成プログラムの指導にあたるなど、後進の育成にも力を入れました。教育者としては、2007年4月に恵泉女学園大学人文学部の教授に着任。その後、2017年4月からは専修大学文学部人文・ジャーナリズム学科の教授を務め、現在に至ります。

さらに、放送と人権に関する委員会（BRC）の委員を崔洋一氏らと共に務めるなど、放送倫理の分野にも関与しています。インターネットメディアのビデオニュース・ドットコムが配信する番組『マル激トーク･オン･ディマンド』では、2008年3月から不定期ながら司会を担当し、時事問題を深く掘り下げる議論をリードしています。

人物像としては、イタリアの著名なジャーナリスト、ティツィアーノ・テルツァーニを師と仰いでいる点が特筆されます。1988年、テルツァーニがドイツの週刊誌「デア・シュピーゲル」のアジア特派員として東京に滞在していた時期に親交を深め、夏の間、テルツァーニがイタリアに帰国した際には、彼の留守宅である目黒の家に住み込み、そこで初期の代表作の一つである『紛いもの考 シミュレーションと戯れる時代』を執筆したというエピソードは有名です。このエピソードからも、彼が単なるアカデミシャンやジャーナリストにとどまらず、自身の経験を作品に結びつける姿勢を持つことがうかがえます。

このように武田徹氏は、多岐にわたる専門分野と活動を通じて、現代社会の複雑な様相を読み解き、ジャーナリズムのあり方についても問い続けている、日本の知性の一人と言えるでしょう。

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