武田雅俊

武田 雅俊（たけだ まさとし）

日本の精神病理学者。1949年生まれ。

大阪大学名誉教授として、長年にわたり精神医学、特に老年学の分野で顕著な業績を挙げました。現在は、老年精神医学に関する研究活動や臨床診療に加え、若手人材の育成にも力を注いでいます。

経歴

武田氏は佐賀県鳥栖市に生を受けました。佐賀県立佐賀西高等学校を卒業後、1968年に東京大学に入学。1972年にはアメリカ合衆国のダートマス大学を卒業し、国際的な視野を広げました。帰国後、東京大学の理系大学院にて1975年に修士課程を修了。その後、改めて医学を志し、大阪大学医学部に入学、1979年に卒業しました。さらに同大学院の博士課程に進み、1983年に修了、医学博士の学位を取得しています。

キャリアの初期には国立療養所松籟荘にて臨床経験を積みました。1989年からは大阪大学医学部にて精神医学の講師を務め、1996年には同大学院医学系研究科の教授に昇任。長きにわたり教育と研究の最前線で活躍されました。2015年に大阪大学を定年退職後、名誉教授の称号を授与されるとともに、藍野大学の学長に就任。さらに2018年からは、一般財団法人仁明会精神衛生研究所の所長を務めています。

学会活動

武田氏は日本の精神医学界において中心的な役割を果たしました。2012年には日本精神神経学会の理事長に就任。そのリーダーシップのもと、2013年には学会運営における重要な改革として代議制を導入し、同学会を公益法人へと移行させました。これは、学会の透明性と社会的な信頼性を高める上で大きな貢献となりました。

国際的な活動も行っており、2014年からは世界精神医学会の「科学・教育・出版に関する常任委員会」の理事を務め、日本の精神医学を世界に発信する役割も担っています。

診療・研究活動

現在、武田氏は複数の機関で活動しています。

一般財団法人 仁明会仁明会クリニック（兵庫県西宮市）: こちらで週に一度、外来診療を担当し、豊富な臨床経験に基づいた医療を提供しています。
一般財団法人 仁明会精神衛生研究所（兵庫県西宮市）: 所長として、老年精神医学を中心とした研究を推進し、次世代を担う若手研究者やスタッフの指導・育成に積極的に取り組んでいます。
大阪河﨑リハビリテーション大学: 認知予備力研究センター長を務め、認知症の予防やリハビリテーションに関する研究にも携わっています。

主な著作

老年期精神障害や認知症に関する専門書、一般向けの啓発書など、多数の書籍を執筆、編集、監修しています。

単著

『老化の生物学と精神医学』(心の医学新書) 診療新社 2003年
『精神医学徒然草 教授室の窓辺から』 新興医学出版社 2015年

共編著・監修

『高齢者の精神障害』(精神科ケースライブラリー） 中山書店 1998年
『老年期精神障害』(臨床精神医学講座 第12巻) 中山書店 1998年
『知っておきたい痴呆患者の診断・治療・介護と社会の対応』(先端医学撰書) 真興交易医書出版部 2000年
『アルツハイマー型痴呆の画像診断』 メジカルビュー社 2001年
『認知の科学と臨床』(新世紀の精神科治療 第6巻) 中山書店 2003年
『現代老年精神医療』 永井書店 2005年
『認知症』(看護のための最新医学講座 第13巻) 中山書店 2005年
『精神科専門医のためのプラクティカル精神医学』 中山書店 2009年
『現代精神医学事典』 弘文堂 2011年
『認知症知って安心!症状別対応ガイド』 メディカルレビュー社 2012年 監修
『認知症の脳画像診断 早期検出と鑑別をめざして』 メジカルビュー社 2015年

翻訳

ナンシー・C.アンドリアセン『脳から心の地図を読む 精神の病いを克服するために』 新曜社 2004年 監訳
Michael Jurgs『アルツハイマー 無の世界への航跡』 アークメディア 2006年 監修
Paola S.Timiras 編『老化の生命科学 分子から生理へ,そして臨床へ』 アークメディア 2007年 監訳
Victor Pace 他 編『認知症の緩和ケア 診断時から始まる患者と家族の支援』 新興医学出版社 2015年 監修

これらの活動を通じて、日本の精神医学、特に老年期の心のケアの発展に多大な貢献を続けています。

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