武蔵野鉄道デキカ10形電気機関車

武蔵野鉄道デキカ10形電気機関車

武蔵野鉄道デキカ10形（むさしのてつどうデキカ10がたでんききかんしゃ）は、西武鉄道の前身である武蔵野鉄道が1923年に導入した初の電気機関車です。これにより、俗に「デキカ」と呼ばれるこの形式は、同社の電気機関車シリーズの始まりを告げました。「デキカ」という称号は、「電気機関車」の略で、武蔵野鉄道ではこの形式専用の記号として使用されました。

背景

武蔵野鉄道は、1915年に池袋から飯能間の非電化路線を開通させ、参入時は主に蒸気機関車を用いて旅客や貨物の輸送を行っていました。しかし、沿線人口の増加とともに利用客が増えたため、全線を電化する動きが高まりました。1922年10月に池袋から所沢間の電化が完了し、いよいよ旅客輸送は電車による運行に切り替えられました。しかし、貨物輸送は依然として蒸気機関車が行っていたため、これを近代化する必要がありました。その結果、デキカ10形の導入が決定され、アメリカのウェスティングハウス・エレクトリック社から新製されました。

車両の特徴

デキカ10形は、前後に張り出した機械室を有する33t級の凸形電気機関車で、動力を4軸に配置した「D形電機」です。機械室のレイアウトは、運転台と密に調和する形で設計されており、特に武蔵野本線の運行において、電気的な旅客運送と連携するために右側に運転台を設置しました。

この電気機関車の全体の長さは8,795mmで、剛体構造を採用して強度を高めています。前面窓は二分割され、屋根部には庇が設けられており、他のウェスティングハウス製の凸形電機との共通点があります。

技術的仕様

デキカ10形には、主要機器が全てウェスティングハウス製で、中央の機器室には主制御器や抵抗器が配置されています。抵抗器は冬季の冷却に課題があり、運転室内に直接排熱される設計でした。一方、制動装置はEL-14Aの自動空気ブレーキを採用し、効率的な制動機能を持っています。

運用履歴と変遷

デキカ10形の運用は戦前から戦中にかけて貨物列車牽引に特化していましたが、1945年の西武鉄道設立に際し形式名が変更されました。70年代にはほぼ廃車となったものの、E12は静態保存され、1975年から保谷車両管理所で保管されました。

E12は2012年に西武鉄道創業100周年のイベントの一環として修復され、一般向けにも公開される機会がありました。残るデキカ13号は弘南鉄道に譲渡され、そこで主力機として活躍しましたが、最終的に休車・解体へと至りました。

結論

武蔵野鉄道デキカ10形電気機関車は、日本における貨物輸送の近代化を象徴する車両であり、その歴史は西武鉄道の発展とともに歩んできました。現在も静態保存されたE12号は、その歴史的価値を後世に伝える重要な存在となっています。

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