武谷三男

武谷三男（たけたに みつお）

概要

武谷三男は、1911年10月2日生まれの日本の理論物理学者で、2000年4月22日に亡くなりました。彼は理学博士として、三段階論や技術論における研究で広く知られています。

経歴

福岡県で生まれた武谷は、台北高等学校を卒業後、京都帝国大学理学部で学びました。卒業後、湯川秀樹や坂田昌一といった著名な研究者と共に原子核や素粒子論の分野で実績を残しました。彼はまた、中井正一や久野収らと反ファシズムの活動を行い、雑誌『世界文化』や『土曜日』に寄稿。そのため、当時二度の検挙にあったこともあります。

戦時中には、理化学研究所で原子爆弾の開発にも関わりました。1943年にはロシア人医師のピニロピと結婚し、戦後は彼女とともに思想活動を行いました。1946年に『思想の科学』を創刊し、初回には「哲学はいかにして有効さを取り戻し得るか」という論文を発表しました。

武谷は原子力問題についても積極的な意見を持ち、アメリカの水爆実験を批判しつつ、同時に社会主義国による核保有を容認しました。また、広島や長崎に対する原爆投下については、「反ファッショの人道的行為」として評価しました。

1953年から1969年には立教大学の教授を務め、1954年には日本初の原子力関連の教科書として『教養の科学原子力』を共著し、立教大学には原子炉を導入。1957年に同大学の原子力研究所設立に寄与しました。1972年、原子力安全問題研究会を立ち上げ、1976年には原子力資料情報室の設立においても指導的役割を果たしました。彼は2000年に前立腺癌でこの世を去りました。

親族

武谷は白系ロシア人の妻ピニロピを持ち、彼女は帝政ロシアの軍人の娘で、ロシア革命の際に一家で日本に亡命しました。養子にはジャズピアニストから医事経済評論家に転身した武谷光がいる他、彼の義理の娘である講談師・神田香織も著作を発表しています。

業績

素粒子論

武谷の業績は、主に素粒子論における方法論に集約されます。特に、彼の三段階論は量子力学の問題解決に革新的なアプローチを与えました。武谷は湯川グループの一員として、素粒子研究を進め、パリティの非保存に関する研究でも知られています。この分野の先駆者たちと共に、素粒子間の相互作用の理解を深めるために努力しました。

武谷理論

武谷理論は、彼が形成した科学論および科学方法論を指し、特に三段階論や技術論を中心としています。

三段階論

三段階論は量子力学の測定と解釈の問題を解決するための方法論で、現象論的段階、実体論的段階、本質論的段階の3つの段階に分かれます。この理論を基に、名古屋大学の坂田昌一と共に多くの研究者を育成しました。

技術論

武谷は技術を「人間の実践における客観的法則性の意識的利用」と捉え、この新しい技術論を展開しました。彼の技術批判は、戦後の日本における現代技術の評価に貢献しました。

平和および原子力問題

武谷は1952年に日本の原子力研究を再開する際の条件として、原子力の平和利用三原則を提唱しました。この原則は、原子力研究における公開性と民主性、自主性を強調しています。また、彼は放射線被曝についても「がまん量」の概念を提案し、放射線の社会的影響を考える上で重要な理論を確立しました。

著作

武谷は多岐にわたる著作を残し、理論物理学や技術論、原子力問題に関する多くの書籍や論文を著しました。代表的な著作には『弁証法の諸問題』や『原水爆実験』があります。彼の著作は学問的な影響を超えて、社会的な意義を持つものと称され続けています。

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