世界文化

『世界文化』とは

『世界文化』は、1930年代の日本において、反戦と反ファシズムの思想を掲げた同人雑誌です。1935年2月に創刊され、1937年10月まで計34号が発行されました。この雑誌は、当時の社会情勢、特にファシズムの台頭に対する危機感から生まれ、知識人たちが集まり、文化運動の拠点として活動しました。

創刊の背景

1933年に起こった滝川事件は、『世界文化』創刊の大きなきっかけとなりました。この事件を契機に、ファシズムの脅威に対抗するため、中井正一を中心に、雑誌『美・批評』を改題して『世界文化』が創刊されました。同人には、中井正一、新村猛、久野収、武谷三男、真下信一、和田洋一、禰津正志、冨岡益五郎など、京都大学出身の知識人たちが名を連ねています。

雑誌の特色と活動

『世界文化』は、軍国主義によって日本文化が閉鎖されていく状況に抗い、世界に開かれた文化を目指すことを宣言しました。その活動は、ファシズム反対の文化運動のよりどころとなり、西欧の反ファシズム運動や人民戦線運動などを系統的に紹介しました。また、映画評論家の淀川長治も映画批評を寄稿するなど、幅広いジャンルの文化人たちが参加していました。

廃刊とその後

『世界文化』は、1937年11月に治安維持法違反容疑で同人が相次いで検挙された（京都人民戦線事件）ことにより、廃刊を余儀なくされました。しかし、その反戦・反ファシズムの思想は、当時の社会に大きな影響を与え、後世の研究者たちによって再評価されています。

姉妹紙

『世界文化』の姉妹紙として、1936年7月4日に創刊された週刊文化新聞『土曜日』があります。こちらも『世界文化』と同様に、反ファシズムの思想を共有し、当時の社会情勢に対する批判的な視点を提示していました。

参考文献

『世界文化』に関する参考文献としては、以下のものがあります。

小田切進 編『現代日本文芸総覧』 上、明治文献、1969年
和田洋一「『世界文化』 総目次」『灰色のユーモア : 私の昭和史ノオト』理論社、1958年
鶴見俊輔「世界文化」「中井正一」、平凡社『世界大百科事典』
法政大学大原社会問題研究所大原クロニカ『社会・労働運動大年表』

関連項目

土曜日 (週刊紙)
反ファシズム（世界）、ファシズム批判（日本）
滝川事件
人民戦線事件

外部リンク

* 2002年度一橋大学社会学部学士論文（加藤哲郎ゼミ副ゼミナール）「滝川事件と『世界文化』『土曜日』」上智大学文学部史学科 田原 友


これらの資料は、『世界文化』の歴史的背景や同人たちの活動、そしてその思想がどのように展開されたかを理解する上で重要な資料となります。

もう一度検索