歩き続ける時

『歩き続ける時』

『歩き続ける時』（あるきつづけるとき）は、シンガーソングライター松山千春が1978年10月21日に発表した通算3枚目のオリジナル・アルバムです。

このアルバムがリリースされた1978年は、松山千春にとって飛躍の年となりました。特に、本作の発表に先立ってリリースされたシングル「季節の中で」が、オリコンシングルチャートで自身初の1位を獲得し、爆発的なヒットを記録していた時期にあたります。

そのような背景の中、『歩き続ける時』はリリースされ、当時の勢いを反映する形で、シングル「季節の中で」とアルバム『歩き続ける時』が、チャート上で一週間ながら同時に1位に輝く快挙を達成しました。これは、アーティストにとって非常に珍しい、まさに絶頂期を象徴する出来事と言えるでしょう。

アルバムの収録曲に関して、興味深い点として、前作『こんな夜は』と本作の間に発表されたヒットシングル「青春」と「季節の中で」、さらにはそれぞれのB面曲「MY自転車」「青春II（セカンド）」といった当時の代表曲が、いずれもこのオリジナルアルバムには収録されていないことが挙げられます。これは、当時のレコード会社の戦略やアルバム構成の考え方によるものと考えられます。

一方で、本作に収録されている楽曲「雪化粧」は、発表から年数を経た1997年にリリースされたシングル「クリスマス」のカップリング曲として、新たにリメイクされたバージョンが収録されるなど、後年まで歌い継がれる楽曲を含んでいます。

『歩き続ける時』は、その後、時代の移り変わりと共に様々なメディアで再リリースされてきました。初めてCD化されたのは1983年で、以降、1989年にはゴールドCD、1990年には通常のCD、1994年には「CD選書」シリーズとして、立て続けに再発売が行われました。これらの1983年から1994年にかけてリリースされたCDは、基本的に同じ音質特性を持っており、「プリエンファシス処理」という、CD初期によく用いられた録音技術が施されていることが特徴です。

その後、2007年には、新たなデジタルリマスタリングが施された紙ジャケット仕様のCDとして再登場しました。この2007年盤は、それまでの盤とは異なり、最新の技術で音源が再調整された結果、よりクリアで向上した音質が実現されています。さらに、比較的新しい動きとしては、2019年に高音質規格であるUHQCD仕様でもリリースされており、ファンは時代ごとに異なる音質や形態でこのアルバムを楽しむことができます。

このアルバムの制作には、多くの才能あるミュージシャンが参加しています。エレクトリックギターを担当したのは安川ひろしと椎名和夫。ドラムは岡本あつお、正木五郎、平野肇が担当しました。エレクトリックベースには本田達也、田中章弘、平野融。キーボードは倉田信雄と中西康明。ラテンパーカッションは木村邦治と中島御。そして、アコースティックギターは清須邦義、安田裕美、そして松山千春自身が演奏しています。これらのプレイヤーたちが一体となり、当時の松山千春の世界観を音楽として表現しました。

このように、『歩き続ける時』は、松山千春のキャリアの中でも特にヒットした時期にリリースされた作品であり、当時のチャートアクションや、収録楽曲、そしてその後の多様な形態での再発といった側面から、彼の音楽活動の一端を知る上で重要なアルバムと言えるでしょう。

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