歴史と人物 (雑誌)

歴史と人物

『歴史と人物』は、中央公論社が発行していた歴史雑誌です。元々は『中央公論』の臨時増刊として不定期に発行されていましたが、好評だったため月刊誌として独立しました。

創刊の経緯

雑誌が創刊される前は『中央公論』の臨時増刊という形で、昭和45年11月号から不定期に発行されていました。臨時増刊は3回発行され、いずれも好評だったため、月刊誌として独立することになりました。当時の編集部は、歴史ものに対する読者の関心の高さについて、「高校生から70代まで幅広い年齢層に読者がおり、真面目で堅い内容でも読まれる」と分析しています。

月刊誌として創刊される前に出版されたものは以下の通りです。

『中央公論』 臨時増刊　歴史と人物　「特集 1 昭和悲劇の主役たち、2 維新小説」（85巻13号）
『中央公論』 臨時増刊　歴史と人物 2「特集 維新比較人物論」（86巻5号）
『中央公論』 臨時増刊　歴史と人物 3「特集 そこで彼らはやって来た 明治維新の国際環境」（86巻8号）

月刊誌としての展開

月刊誌としての創刊は昭和46年9月号で、昭和58年12月号まで継続しました。巻号は創刊年を「1年」とするスタイルでした。取り上げる話題は日本史が中心で、時代は古代から現代まで幅広く扱っていました。初期には東洋史や西洋史を中心とした号もあり、歴史総合誌としての性格を持っていました。内容は文章中心で、図や絵はほとんどありませんでした。体裁は『歴史読本』に似ていますが、掲載される論考は白川静の『孔子伝』など、高度なものが含まれていました。毎号300ページ前後のボリュームがありました。

特集テーマの例

以下は、過去の特集テーマの例です。

昭和46年9月号 「特集 地中海世界 神々の相剋と調和」
昭和46年5月号 「明治維新と南北戦争」
昭和47年10月号「孔子の生涯」
昭和47年1月号「特集 キリスト教文明の挑戦と応戦」
昭和47年2月号「エリザベス朝の思想空間」
昭和47年4月号「特集 蒙古帝国の世界史的衝撃」
昭和47年6月号「緊急特集 高松塚古墳の源流を探る」
昭和48年9月号「特集 ヒトラーとナチズムの出現」
昭和48年11月号「特集 中国歴代宰相伝 李斯と陳平〜林則徐」
昭和49年1月号「特集 レーニンとロシア革命」
昭和51年7月号「特集アメリカ建国二百年と日本」
昭和49年6月号「特集 私の描いた日本の“人間” 池波正太郎・大原富枝他11名」
昭和49年7月号「特集 私の描きたい人物像 井上靖・伊藤桂一他」


また、文芸出版社としての一面を活かし、小説家の目線から特集した号もありました。

月刊誌でありながら、1年に13号以上発行された年もありましたが、これは増刊号が発行されていたためです。以下は増刊号の例です。

昭和55年11号増刊「江戸の二十四時間 庶民風俗・その日常生活と楽しみ」
昭和56年9月増刊「実録 太平洋戦争」
昭和56年増刊「日光東照宮」
昭和57年9月増刊「秘録 太平洋戦争」
昭和58年第2号増刊（1983年1月）「太平洋戦争-開戦秘話」
昭和58年増刊「劇画フランス革命とナポレオン」

歴史と人物 太平洋戦争シリーズ

1984年からは『歴史と人物 太平洋戦争シリーズ』が刊行されました。これは『中央公論』の名前が取れ、『歴史と人物』と改題され、副題に「太平洋戦争シリーズ」と付いたものです。以前から太平洋戦争を扱った記事は多く掲載されていましたが、このシリーズでは太平洋戦争に参戦した将兵の証言記録に特化し、軍事雑誌色を強めました。1985年に季刊化し、昭和61年冬号をもって休刊しました。

概要

雑誌の大きさはA5サイズでした。表紙は白抜き（または黒抜き）で「中央公論」の文字が左上に小さく表記され、「歴史と人物」が大文字で描かれていました。題字の下には美術絵や風景写真が使われ、目次が折りたたみで記事名が着色されて並べられていました。執筆陣は宮崎市定や白川静などの大学教授や学芸員の他、中央公論社と契約している作家・評論家が起用されていました。

中公ムック「歴史と人物」

2020年には「中公ムック 歴史と人物」として誌名が復活しました。発行元は中央公論新社で、A4変型判で初中級者の歴史ファンに向けた内容となっています。11月には「戦国争乱〜『桶狭間の戦い』から『大坂の陣』まで」と「江戸五百藩〜ご当地藩のすべてがわかる!」の2冊が刊行されました。

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