死んだふり解散

死んだふり解散（しんだふりかいさん）について

「死んだふり解散」とは、1986年6月2日に実施された衆議院解散の通称であり、「寝たふり解散」とも呼ばれています。この解散は当時の中曽根康弘首相によって引き起こされ、衆参同日選挙を見据えた計画的なものでした。

背景

1986年時点で、中曽根首相は政権について4年目に突入していました。彼が率いる自民党の基盤は決して強固ではありませんでしたが、世論調査による内閣支持率は高かったため、党勢回復を目指し、衆参同日選挙を狙っていました。しかし前年には、最高裁が衆議院の議員定数不均衡、つまり「一票の格差」に関して違憲判決を下しており、この問題が解散に向けた大きな障害となっていました。

そのため、政府と与党は公職選挙法の改正案を提出し、この定数不均衡の解消を図ろうとしました。野党側もこの問題を抱えており、解散総選挙が実施される可能性を恐れて交渉に臨みました。

政治的駆け引き

各党は選挙区の区分について基本的には合意しましたが、周知期間を巡る対立が発生します。特に野党は6ヶ月の周知期間を主張し、これによって解散を封じることを狙っていました。一方の自民党は、次の選挙から施行することを求めており、その結果、与野党間に渡る対立が続きました。

最終的には、坂田道太衆議院議長の仲介によって新しい公職選挙法は30日の周知期間が設けられる形で成立し、6月2日に衆議院が解散される運びとなりました。

解散の実施

衆議院解散の実施に際し、野党からは中曽根首相が臨時国会を召集した理由について説明を求めたものの、自民党はそれを拒否しました。そこで野党は反発し、本会議が開けない状況が続きましたが、最終的に中曽根内閣が解散詔書を提出し、坂田議長の前で衆議院が解散されることとなりました。この瞬間は議長応接室で行われ、後の国会の運営においてはこのような形式での解散は行われていません。

この影響を受けて、政府は7月6日に実施予定の第14回参議院議員通常選挙と同時に第38回衆議院議員総選挙を行うことを決定し、歴史上2度目の衆参同日選挙が実現しました。

選挙の結果

この選挙では、高い投票率と与党自民党の高い内閣支持率を背景に、自民党が衆参両院で圧勝しました。この結果、自民党は総裁の任期延長を決め、中曽根の業績を称える形となりました。中曽根首相は、解散を行う際に自身の政治的意図を秘匿していたことを表現し、「死んだふりをした」と発言しており、そこから「死んだふり解散」と呼ばれるようになりました。

その後の影響

衆参同日選挙を目的としたこの解散に対しては、選挙の無効を求める訴訟も起こされましたが、1987年には名古屋高裁と最高裁がいずれもその主張を棄却し、解散による選挙は合法であるとの判決が確定しました。

この解散は日本の政治史において重要な出来事であり、多くの政治的教訓を残しています。

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