殊能将之

殊能将之：異才を放った覆面ミステリー作家

殊能将之（1964年1月19日 - 2013年2月11日）は、日本の推理作家。その生涯は、ミステリーに満ちていました。生前は一切の個人情報を明かさない覆面作家でしたが、没後に本名が田波正であったことが公表されました。

生い立ちと経歴

福井県出身の殊能は、高校時代からその才能を発揮していました。『SFマガジン』のコラムに登場し、「福井の天才」と評されたほどです。名古屋大学理学部を中退後、上京。編集プロダクション勤務を経て、体調を崩し帰郷。作家デビュー後も福井を拠点に活動しました。

デビューと作風

1999年、『ハサミ男』で第13回メフィスト賞を受賞し、華々しくデビュー。ペンネームは、楚辞の一節に由来します。彼の作品は、博識とサーカズムを織り交ぜた独特のスタイルが特徴です。ミステリーの定石を覆すような斬新なアイデアと、緻密な構成で読者を魅了しました。

作品の特徴

殊能作品の魅力は、その独創性にあります。例えば、『キマイラの新しい城』では、巻末に大量の参考文献が掲載されていますが、SF評論家の福本直美は「作品の内容とはほとんど無関係」と指摘しています。このことからも、彼の創作における異端ぶりがうかがえます。SFとミステリーへの造詣が深く、特にアヴラム・デイヴィッドスンとポール・アルテを敬愛していました。

多様な趣味と作品への影響

蘊蓄や言葉遊び、創作料理を好み、それらは作品のガジェットとしても登場しました。公式サイトでは、日記やTwitterを通じて、その日常や思考を垣間見ることができました。

晩年と死

短編「キラキラコウモリ」以降、作家としての活動は控えめでしたが、公式サイトやTwitterは頻繁に更新していました。2013年2月11日、49歳という若さで死去。その才能を惜しむ声は、今も絶えません。

死後の評価

没後、名古屋大学SF研究会から原稿集が刊行され、2015年には未発表短篇集が発表されました。大森望による解説では、田波正としての詳細なプロフィールが紹介されています。また、『殊能将之 読書日記 2000-2009』は、第47回星雲賞ノンフィクション部門の参考候補となりました。

主な作品

石動戯作シリーズ
美濃牛
黒い仏
鏡の中は日曜日
樒 / 榁
キマイラの新しい城
その他
ハサミ男
子どもの王様
殊能将之 未発表短篇集
* 殊能将之 読書日記 2000-2009

殊能将之は、ミステリー界に独自の足跡を残した、孤高の作家でした。その作品は、今も多くの読者に愛され続けています。

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