殺しの烙印

殺しの烙印 (1967)

『殺しの烙印』は、1967年に公開された鈴木清順監督による日本映画。主演は宍戸錠。日活が製作・配給した。

概要

殺し屋の「ランキング」が存在する世界を舞台に、主人公の殺し屋・花田が、組織や他の殺し屋との抗争に巻き込まれていく姿を描いたアクション映画。スタイリッシュな映像、前衛的な演出、不条理なストーリー展開が特徴。公開当時は日活内部で酷評され、鈴木清順監督が解雇される騒動にまで発展したが、観客や一部の批評家からは熱狂的な支持を受け、カルト映画としての地位を確立した。

ストーリー

殺し屋の世界でランキング3位の花田は、元締めの藪原から謎の男の護送を依頼される。任務中、ランキング上位の殺し屋を倒し、新たなナンバー2となる。しかし、次の任務で手違いから無関係の人物を射殺してしまい、ランキングから転落。組織から命を狙われる身となる。

花田は次々と送り込まれる刺客を退けるが、その中には愛し合うようになった謎の女・美沙子の姿もあった。美沙子は組織に囚われ、花田の前に現れた最後の敵は、かつて護送した謎の男、伝説の殺し屋ナンバー1・大類だった。死闘の末、相討ちとなる花田は朦朧とする意識の中で「ナンバー1は俺だ」と叫び、現れた刺客を射殺する。しかし、それは美沙子だった。花田は美沙子を撃ったことに気づかず、息絶える。

キャスト

花田五郎：宍戸錠
大類進：南原宏治
藪原道彦：玉川伊佐男
中条美沙子：真理アンヌ
花田真実：小川万里子

スタッフ

監督：鈴木清順
脚本：具流八郎
音楽：山本直純

製作の背景

日活は当時、梅雨時期の観客動員のため、エロ作品とアクの強いハードボイルド作品の二本立て興行を行っていた。『殺しの烙印』は、エロティシズムを前面に出した作品の併映作品として企画された。脚本は、新進気鋭の脚本家グループ「具流八郎」が担当。「殺し屋の世界ランキング」という斬新なアイデアを基に、ハードボイルドな前半部分が書き上げられ、他のメンバーが話を肉付けしていく形で制作された。

評価と影響

本作は公開当時、その前衛的な内容から日活上層部の反発を買い、鈴木清順監督の解雇騒動に発展。しかし、一部の観客や批評家からは熱狂的に支持され、カルト映画としての評価を確立した。その独特な映像スタイルやストーリー展開は、クエンティン・タランティーノ、ジョン・ウー、パク・チャヌクといった海外の映画監督にも影響を与えたと言われている。

英国映画協会による企画“The best Japanese film of every year”では1967年の一本として選出。また、2022年には4Kデジタル復元版がベネチア国際映画祭で最優秀復元映画賞を受賞するなど、国際的にも高い評価を受けている。

サウンドトラック

山本直純が手掛けた音楽も高く評価されており、オリジナルサウンドトラック盤が複数回にわたりリリースされている。

鈴木清順の追放

本作を「わからない映画」と批判した当時の日活社長が、鈴木清順との専属契約を一方的に打ち切ったことがきっかけで、映画界を巻き込んだ一大騒動に発展した。鈴木は日活を提訴し、和解が成立するまでに約10年間のブランクを余儀なくされた。

続編企画

鈴木清順のブランク期間中には、『続・殺しの烙印』が企画されたが、制作には至らなかった。また、2001年には本作品の続編と銘打った『ピストルオペラ』が公開されたが、ストーリーは直接的な繋がりはない。

ビデオグラム

初期のビデオグラムには修正版が収録されていたが、後に発売されたDVDで完全版が収録された。

外部リンク

殺しの烙印 - 日活
殺しの烙印 - allcinema
殺しの烙印 - KINENOTE
殺しの烙印 - IMDb（英語）

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