殺人幻想曲

殺人幻想曲（Unfaithfully Yours）

『殺人幻想曲』は、1948年に公開されたアメリカのスクリューボール・ブラックコメディ映画で、監督・脚本を手掛けたのはプレストン・スタージェスです。主演にはレックス・ハリソンがアルフレッド・デ・カーター卿役を、リンダ・ダーネルが若妻ダフネ役を務めています。この映画は、浮気を疑った旦那が妻を殺害しようとする過程で繰り広げるドタバタ劇を描いています。

あらすじ

物語は、名指揮者アルフレッド・デ・カーター卿が母国イギリスからアメリカの自宅に帰るところから始まります。彼を迎え入れるのは若い妻ダフネです。デ・カーター卿は、留守中にダフネの妹の夫オーガストに妻の世話を頼んでいましたが、オーガストはその認識を誤り、浮気をしているのではないかと見張ることにしたのです。これを受けて、探偵スウィーニーにダフネの尾行を依頼することになりました。

デ・カーター卿は義弟の誤解に呆れながらも、スウィーニーからの報告を読んで驚愕します。報告書には、ダフネが若い秘書アンソニーとホテルにいる様子が書かれていたため、嫉妬に駆られたデ・カーター卿は、コンサート中に自らの行動を思い巡らせます。彼は、二つのシナリオとして、妻を殺しアンソニーに濡れ衣を着せる計画、或いは潔く妻と別れるという選択肢を描いてしまいます。

その後、指揮する中で考えた三つのシナリオには、ロッシーニの『セミラーミデ序曲』に合わせた完全犯罪の構想、ワーグナーの『タンホイザー序曲』に基づく離婚、チャイコフスキーの『フランチェスカ・ダ・リミニ』を振りながら行うロシアン・ルーレットが含まれていました。コンサートが終わると、デ・カーター卿は第一の計画を実行しようとしましたが、次々と失敗を重ね、結局妻の浮気は誤解だったと判明し、夫婦は仲直りを果たします。

キャスト

アルフレッド・デ・カーター卿：レックス・ハリソン
ダフネ：リンダ・ダーネル
オーガスト：ルディ・ヴァリー
バーバラ：バーバラ・ローレンス
アンソニー：カート・クルーガー
ヒューゴ・スタンドフ：ライオネル・スタンダー
* 探偵スウィーニー：エドガー・ケネディ

スタージェスが手掛けた本作は、彼の映画製作キャリアにおいて重要な作品の一つですが、興行的には成功を収めました。興行収入は振るわず、当時の観客には、へまばかりする殺人者というテーマが受け入れられなかったと言われています。しかし、現在では多くの批評家から高い評価を受けており、その後のリメイクやDVD化も行われました。

制作と背景

スタージェスはこの映画のアイディアを1932年に思いついたとされ、様々なスタジオで試みたものの、しばしば断られ続けました。その後の1948年にようやく制作が実現。映画が完成するも、キャロル・ランディスの死が影響し、公開が遅れることとなります。最終的にニューヨークで初上映されたのは、1948年11月5日でしたが、興行的な成功はともなわず、スタージェスにとって厳しい結果をもたらしました。

コメントと影響

スタージェス独特のキレのあるセリフ回しは好評を博しましたが、映画のテーマが重いことや観客が共感できる登場人物が欠けていたことが興行面での失敗に繋がったとの意見もあります。それにもかかわらず、2008年にはクエンティン・タランティーノ監督がこの作品を高く評価し、他の批評家たちからも好評を得ています。

リメイク情報

1984年にはハワード・ジーフ監督によるリメイク『殺したいほど愛されて』が公開され、ダドリー・ムーアやナスターシャ・キンスキーが出演しました。この作品もオリジナルとは異なる要素が含まれています。

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