母子像 (ステーン)

『母子像』

『母子像』（ははこぞう、独: Mutter und Kind、英: Mother and Child）は、オランダの黄金時代に活躍した画家、ヤン・ステーンによって1652年頃に制作された油彩画です。彼の初期の重要な作品の一つであり、現在はドレスデンに位置するアルテ・マイスター絵画館に所蔵されています。

作品の概要

この作品は、若い母親がぽっちゃりとした赤ん坊に食事を与えているシーンを描き出しています。母親はシンプルな黒いワンピースに白いブラウスを合わせており、真剣な表情で子供を見つめています。彼女の頭には毛皮のボンネットが被せられ、その下には白いリネンの帽子が見えます。この帽子が彼女の集中した表情を一層際立たせています。

画面の右側には、粥が入った小鍋とビスケットが盛られた淡い色の皿が置かれた小さなテーブルが配置されています。左端には開いた窓があり、そこから対面する家が見え、入り口には別の人物が立っている様子も描かれています。

背景と技法

ヤン・ステーンは1649年頃にハーグで結婚しており、この『母子像』は彼がその地で過ごした生活の中で描かれたと考えられています。この作品に見られる母子のモチーフや、ほぼモノクロの色調は、後期のステーンの作品にしばしば見られる多人数が登場し、賑やかな雰囲気を持つ風俗画とは対照的です。特に彼の後期作品は、乱雑な環境の中で多様な人物を描くことが多かったため、このような静かなシーンは印象的です。

本作品では、彼の師であったアドリアーン・ファン・オスターデが描いた穏やかな農民の姿を参考にしたことが伺えます。ステーンはオスターデの影響を受けつつ、自身のスタイルと感情を融合させ、母子の温かな瞬間を巧みに描き出しています。

アートにおける意義

『母子像』は、家庭の重要性や親子の関係を強調した作品として、多くの観衆に感動を与えてきました。この作品は単なる親子の肖像にとどまらず、17世紀オランダの社会や文化の一端を垣間見ることができ、視覚的な物語性を持っている点でも高く評価されています。母性が表現されたあたたかいシーンは、観る者に親しみや安らぎを与えます。特に、母親の表情や赤ん坊への愛情が伝わってくる瞬間は、時代を超えて普遍的なテーマであり、現代においても共鳴するものがあります。

参考文献

• - 『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』、産経新聞社、フジテレビジョン、2022年刊行。
• - アルテ・マイスター絵画館公式サイト。

もう一度検索