毛利新田

毛利新田の成立と歴史

毛利新田（もうりしんでん）は、明治時代に愛知県豊橋市神野新田町に広がる干拓地です。この新田は、三河国渥美郡牟呂、磯邊、大崎の3つの村にまたがる海岸の洲を干拓して作られました。現在の神野新田の前身として、多くの歴史と背景を持ちます。

地理的背景と干拓の歴史

豊橋市を流れる豊川は、三河湾に面した六条潟という遠浅の海域があります。江戸時代初期から、冬季に西風が強く吹くことで海岸に土砂が堆積し、新しい洲が出来ていました。そのため、この地域では多くの干拓事業が始まり、江戸時代末期には25の新田が開発されました。

しかし、干拓事業は冬の西風による波浪で堤防が破壊されることが多く、明治以降、広大な洲が存在しているにも関わらず、新たな干拓は一時断念されました。愛知県庁は、もし強固な堤防を築けば以前の新田の総面積に匹敵する1,000町歩（約1,000ヘクタール）の新田が得られることを理解していました。

江戸時代の新田開発

江戸時代には、すでに25の新田が開発されていました。それぞれの新田には、完成年があり、青木新田（1693年）、青竹新田（1770年）、梅村新田（1704年）など、歴史的な記録が残されています。これらの新田開発には多くの試行錯誤がありましたが、江戸時代の技術が活かされ、地域の農業の発展に大きく寄与しました。

明治時代の動き

1878年（明治11年）、旧長州藩士が周囲の地域で金融業を始めます。第百十国立銀行が設立され、毛利祥久の養父である毛利親信が取締役に就任しました。1880年頃、愛知県庁土木課の岩本賞壽が牟呂の海岸沖が干拓に適していることを見出し、1885年に毛利祥久が家督を相続し、銀行の取締役となりました。

1887年、毛利は新田開拓を推進する決意を固めます。しかし、この時点で十分な資金が必要な大工事であり、愛知県庁からの支援が不可欠でした。県の勝間田知事は、新田開拓の資金を確保するため必要な支援を約束します。

新田工事の進展

1887年に毛利は用水工事を開始し、1888年には愛知県が工事の監督を行うこととなりました。より良い環境を整えるため、地元の農家らとは多くの調整を行いながら進められました。1890年には堤防が完成し、毛利新田が築かれることとなります。

しかし、1891年に発生した濃尾地震により堤防が破損。更に1892年には暴風雨によって堤防が壊滅的な被害を受け、多数の死者が出る不幸な事態に見舞われました。この結果、毛利は新田の開発を断念せざるを得なくなり、工事費の損失を被りました。
その後、1893年には神野金之助が毛利新田の権利を40,000円で取得し、再開拓が始まることとなります。

基本設計とその影響

福島献吉による1821年の測量結果は、毛利新田の設計にも活かされました。歴史を通じて、無数の天災と戦いながら新田の基本形態が形成され、神野新田の形となって引き継がれています。毛利新田は単なる干拓地だけでなく、地域の農業や経済、そして人々の生活に深く結びついている重要な場所なのです。

このように、毛利新田は明治時代における干拓事業の象徴であり、地域社会の発展に寄与した重要な歴史を持つ場所として今も残っています。

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