毛利綱元

毛利綱元：長府藩主の生涯と赤穂浪士預かり

毛利綱元は、長門国長府藩の3代藩主として知られています。2代藩主・毛利光広の長男であり、慶安3年(1650年)に江戸で誕生しました。承応2年(1653年)、わずか3歳で父の後を継ぎ、藩主の座につきました。幼少期の藩主就任という難しい状況の中、綱元は藩政の安定に尽力しました。

就任早々、綱元は叔父である毛利元知に1万石を分与し、清末藩の立藩を許しました。この決断は、家中の勢力バランスを考慮した、綱元の政治手腕を示すものと言えるでしょう。寛文4年(1664年)には甲斐守に叙任され、その地位はさらに盤石なものとなりました。

綱元の治世は、藩財政の安定化に重点が置かれていました。天和3年(1683年)、綱元は財政再建を目指した「天和御法度」を制定。これは倹約を主とした政策で、綱元の藩政改革への強い意志がうかがえます。元禄10年(1697年)には、窮民救済にも力を注ぎ、文武奨励や覚苑寺の建立など、藩政のあらゆる面で功績を残しました。また、文芸・和歌にも造詣が深く、「歌書尾花末」や「和歌視今集」に作品が収められるなど、多才な人物としても知られています。

宝永4年(1707年)、長男の吉元が本家の長州藩主を継いだことは、綱元にとって大きな喜びであったことでしょう。しかし、その2年後、宝永6年(1709年)に60歳で亡くなりました。跡を継いだのは、吉元の長男である元朝でした。死後、綱元は覚苑寺および豊功社に祀られ、人々の記憶に留め続けられています。

赤穂浪士預かりと綱元の対応

元禄15年(1702年)12月15日、赤穂浪士による吉良義央討ち入り事件が発生します。この事件後、綱元は47士のうち10名のお預かりを命じられました。この時の綱元の対応は、非常に厳格なものでした。浪士たちは通常の罪人同様、厳重に扱われ、到着後は厳重な監視体制の下に置かれました。

綱元は赤穂浪士に会うことは一切ありませんでした。浪士たちの暖をとるための酒や煙草といった要求も拒否し、火鉢の提供もされませんでした。切腹の際には、「扇子腹」として扇子を十本用意させたという記録も残されています。これは幕閣御目付から注意を受け、変更されたとされています。

切腹後、綱元は事件の収束を喜び、収容小屋の破却や切腹跡地の処理を指示しました。検使からの指示を受け、遺体の処分を検討しましたが、泉岳寺の酬山和尚が引き取る申し出があったため、葬送は同寺によって執り行われました。しかし、後に酬山和尚は義士の遺品を売却したと伝えられています。

綱元は、江戸で亡くなったにもかかわらず、遺体を長府に送らせました。これは、本家の毛利家ゆかりの泉岳寺に赤穂浪士と併葬されることを避けたためだと考えられています。このことが、長府藩と泉岳寺の関係悪化、ひいては絶縁へと繋がったと考えられています。現在、六本木ヒルズの毛利庭園内には、他のお預かり大名家と異なり、赤穂浪士に関する供養塔や顕彰碑は一切存在せず、切腹地の場所も不明なままです。

毛利綱元の遺品と系譜

綱元の遺品として、肖像画や「伊勢物語」の自筆書などが現存し、歴史資料として貴重な価値を持っています。これらの遺品は、綱元の生涯や人物像を知る上で重要な手がかりとなります。

綱元の系譜は、以下の通りです。

父：毛利光広
母：清殊院（本多忠義の娘）
正室：房姫（池田光政の娘）
長男：毛利吉元（長州藩主）
次男：本多忠次
側室：貞性院
四男：毛利元矩
養子：毛利元朝

毛利綱元の生涯は、藩政改革への尽力、赤穂浪士預かりにおける厳格な対応、そして、晩年の遺体処理における泉岳寺との確執など、様々な出来事を通して、その複雑な人物像が浮かび上がってきます。彼の功績と決断は、今もなお、歴史研究において重要なテーマとなっています。

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