毛利蔵人

毛利蔵人：夭折の作曲家が残した音楽の足跡

1950年、兵庫県芦屋市に生まれた毛利蔵人（本名：平井祥治）。幼少期、両親の離婚により養子に出されるという波乱の人生を送りました。この事実を大学受験の際に知ったというエピソードからも、彼の生涯の複雑さを窺い知ることができます。

中学生時代から独学でピアノと作曲を始め、高校時代には弦楽合奏クラブでヴィオラやチェロを独習するなど、並外れた音楽への才能を開花させました。京都大学受験の失敗や出生の秘密を知るなど、困難な時期を経験した後も、音楽への情熱は消えることはありませんでした。

作曲家として本格的に歩み始めるきっかけとなったのは、作曲家別宮貞雄氏への師事の願いが叶わなかった後、桐朋学園大学教授の三善晃氏に師事願いをしたことです。経済的な理由から月謝を支払えないことを事前に伝えた上で、三善晃氏に師事し、桐朋学園大学図書館に勤務しながら、1971年から1972年にかけてオーケストレーションを学びました。

毛利蔵人の才能はすぐに開花しました。1973年には『弦楽四重奏曲第1番』で日本音楽コンクール作曲部門第3位に入賞。その後も精力的に作品を発表し続け、1995年には『三軒の家』で奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門第1位を受賞するなど、数々の賞を受賞しました。

彼の作品は管弦楽曲、室内楽、歌曲、合唱曲など多岐に渡り、映画、舞台、テレビ、ラジオなど、幅広い分野で活躍しました。特に、師である三善晃氏と共に制作に携わった『赤毛のアン』の劇中音楽は、多くの人々に親しまれ、彼の代表作として広く知られています。

毛利蔵人という名前はペンネームであり、後に本名として登録されました。「毛利」はモーリス・ラヴェル、「蔵人」はクロード・ドビュッシーへのオマージュであると言われています。

作曲家としての活動だけでなく、武満徹氏のアシスタントとして後期の作品に関わったり、芥川也寸志氏と映画やドラマ音楽を共作するなど、音楽界に多大な貢献を果たしました。

しかし、才能溢れる彼の音楽人生は、46歳の若さで胃癌により幕を閉じました。もし彼が存命であったならば、どのような音楽を世に送り出したのでしょうか。その可能性を想像するだけで、胸が締め付けられます。

彼の残した作品は、今もなお人々の心に響き続けており、後世の音楽家たちに大きな影響を与え続けています。

主要作品

毛利蔵人の作品リストは多岐に渡り、以下はその一部です。彼の幅広い音楽性を垣間見ることができるでしょう。

管弦楽
GROOM IS GLOOMY
イン・プロセス・オブ・タイム～オーケストラと打楽器のための～

吹奏楽
Surely You're Joking (ヤマハ吹奏楽団浜松委嘱作品)

室内楽
弦楽四重奏曲第一番
待ちながら（弦楽アンサンブル）
冬のために
2つのヴァイオリンのための「ディファレンス」
テネブローソ・ジョルノ
帰り道に
五月の朝（室内オーケストラ）

独奏曲
アナモルフォーズ（ギター）
3つの小品（ピアノ）
イベールに捧ぐ
子守歌
アンビヴァランス
10のエチュード（ピアノ）
点と線（素材の提供）
増殖する点
静
増殖する線
響き
減衰する点
ハーモニックスとクラスター
減衰する線
動
コラール

歌曲
新川和江の三つの詩
よしなしうた
In a context

混声合唱曲
ひとりね―閑吟集より―

映画音楽
泥の河
疑惑（芥川也寸志と共作）
君は裸足の神を見たか
潤の街
伽椰子のために

テレビ音楽
赤毛のアン（主題歌作曲は三善晃）
武蔵坊弁慶（テーマ曲作曲は芥川也寸志）
信長 KING OF ZIPANGU

毛利蔵人の音楽は、彼の複雑な人生経験と深く結びついており、その独特の感性と才能が凝縮されたものです。彼の作品は、これからも多くの人々に感動と共感を呼び続けることでしょう。

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