民主党 (セルビア)

セルビア民主党：社会民主主義を掲げる親EU中道左派政党

セルビアの民主党（Демократска странка、略称：ДС）は、社会民主主義を標榜し、欧州連合（EU）との連携を重視する中道左派の政党です。その歴史は、20世紀初頭の激動の時代から現代まで、セルビアの政治情勢と深く関わってきました。

結成から第二次世界大戦まで

1919年、サラエヴォにおいて、セルビア、クロアチア、スロベニアの自由主義者たちが結集し、「セルビア・クロアチア・スロベニア民主国家党」として創設されました。リュボミル・ダヴィドヴィッチを首相に輩出しましたが、内紛により活動範囲が限定されます。1929年、アレクサンダル1世による憲法停止とユーゴスラビア王国宣言により、下野を余儀なくされました。

第二次世界大戦中、民主党の指導部はイギリスに亡命。国内に残った党員は、ナチス・ドイツに対するレジスタンス運動に参加しました。しかし、戦後、ヨシップ・ブロズ・チトー率いる共産党が政権を掌握すると、民主党は活動を禁止されました。

党の再建とジンジッチ時代

1989年、東欧革命の波に乗り、ユーゴスラビアでも複数政党制導入の動きが活発化する中で、民主党は再建されました。再結成には、ゾラン・ジンジッチやヴォイスラヴ・コシュトニツァなど、知識人層が中心となって参加しました。1990年のセルビア共和国初の複数政党制議会選挙では、与党・セルビア社会党に有利な小選挙区制のもと、250議席中7議席を獲得。1992年の議会選挙では6議席にとどまりました。

その後、民族主義を強めたコシュトニツァが離党し、セルビア民主党を結成。1993年の議会選挙では比例代表制が導入され、民主党は29議席に躍進しましたが、セルビア社会党などの後塵を拝しました。1994年には、ジンジッチが党首に就任しました。

ジンジッチは、ユーゴスラビア紛争後の民族主義の高まりの中で民主党を維持しましたが、大きな勢力にすることはできませんでした。1996年から1997年にかけて、ミロシェヴィッチ政権に対する大規模な抗議行動が発生。ジンジッチは、第二次世界大戦後初の非共産系のベオグラード市長に就任しました。しかし、政敵との連合は内紛により短期間で瓦解。1997年の議会選挙はボイコットしました。

1999年、コソボ紛争におけるNATOによるセルビア空爆時、ジンジッチは一時モンテネグロへ避難。ビル・クリントン大統領との握手は、ジンジッチと民主党の親欧米的なイメージを強調しましたが、国内の民族主義者からは「売国奴」と批判されました。帰国後、ジンジッチは国家の安全を損なったとして逮捕されました。

2000年、ミロシェヴィッチ政権が打倒されると、同年の議会選挙で民主党などが参加するセルビア民主野党連合が勝利し、ジンジッチがセルビアの首相に就任。コシュトニツァがユーゴスラビア連邦の大統領となりました。

ジンジッチ暗殺後

2003年、ジンジッチ首相はベオグラードで暗殺されました。後任の党首にはボリス・タディッチが就任。民主党は、ジンジッチ暗殺後の国民議会選挙で37議席にとどまりましたが、タディッチは2004年の大統領選挙で勝利しました。

2007年の国民議会選挙では64議席を獲得し、2008年の大統領選挙ではタディッチを再選させました。同年の議会選挙では、G17プラスなどの親欧米派政党と連合を組み、議席をさらに伸ばしました。選挙後、セルビア社会党と連立政権を樹立しましたが、2012年の総選挙で野党に転落しました。

現在の民主党

自由主義から出発した民主党ですが、現在は社会主義インターナショナルおよび欧州社会党に加盟し、穏健民主派かつ国際協調を重視する中道左派としての立場を明確にしています。セルビアの政治において、重要な役割を果たし続けています。

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