気球連隊

気球連隊の概要

気球連隊（ききゅうれんたい）は、大日本帝国陸軍が有していた唯一の気球に特化した部隊です。この部隊は特定の聯隊番号を持っていなかったにもかかわらず、特異な存在感を示していました。特に、太平洋戦争中に行った風船爆弾の使用が広く知られています。

歴史的背景

気球の軍事的な使用は1877年の西南戦争にまで遡ります。当時、気球を用いた熊本城の救援計画が立案され、初めての軍用気球が飛ばされましたが、実戦に投入される前に作戦が終了しました。以降、日露戦争での戦況偵察を目的として、臨時気球隊が旅順攻囲戦に参加し、成功を収めました。

1907年には気球班が正式に陸軍気球隊に組織改編され、鉄道連隊や電信大隊と協力しながら交通兵旅団の一部を成しました。1913年には、陸軍の航空基地である所沢飛行場に移転し、以降も部隊の活動を続けました。1927年には新たに千葉県の作草部に拠点を移し、その兵力は気球2つ、予備2つを持つ2個中隊に構成されました。

1936年に陸軍気球聯隊に改組され、砲兵科に転属し、さらなる戦争の激化と共に様々な戦闘に参加しました。特に1937年の日中戦争やその後の作戦においては重要な役割を果たしましたが、航空機の進化により、気球部隊の任務は徐々に失われていきました。

風船爆弾の使用

第二次世界大戦の終盤、気球隊は新たな運命に直面しました。1944年、アメリカ本土に対する風船爆弾の作戦が発案され、気球連隊を母体とした「ふ」号作戦が実施されました。この作戦のために人員は約3,000名に増え、3個の大隊で展開されました。気球部隊は、茨城、千葉、福島にそれぞれ基地を設け、約9,300個の風船爆弾を放球しました。その一部はアメリカ本土に到達することに成功しました。

1945年4月にはこの作戦が終了し、部隊は解隊され、その後の8月に迎えた終戦を迎えました。

歴代連隊長

気球隊は数人の連隊長が指揮を執りました。例えば、河野長敏氏は1907年から1914年まで、次いで徳永熊雄氏が1908年に着任し、続いて有川鷹一氏がその後を継ぎました。1932年以降は航空兵として竹内慶彦氏や相良千代松氏らが活躍しました。彼らのリーダーシップのもと、気球隊は多くの歴史を刻んでいきました。

施設と遺構

千葉県稲毛区作草部には、かつて二つの大きな気球格納庫が存在しました。このうちの一つ、旧第二格納庫は1934年に完成し、特徴的なダイヤモンドトラス構造を採用しています。残念ながら、老朽化のため2020年に解体されましたが、その部材を使ったモニュメントが千葉公園に設置され、地域の歴史を伝えています。

気球連隊の歴史は、多くの戦争や時代の変遷を通じて日本の軍事史の一部として重要な位置を占めています。

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