気腫疽

気腫疽（きしゅそ）

気腫疽とは、主にウシやヒツジに感染する伝染病であり、その原因となるのは気腫疽菌（学名: Clostridium chauvoei）です。この病気は、世界中の土壌に広く分布する偏性嫌気性のグラム陽性有芽胞菌によって引き起こされます。気腫疽は、日本においても家畜伝染病予防法に基づき、届出伝染病に指定されています。感染例としては、ウシやスイギュウ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イノシシなどがあり、これらの動物において特に危険視されています。

主な病原体

気腫疽菌は、菌体が運動性を有し、莢膜を持たない特性を持っています。そのため、其の特性に基づいて培養し、検査が行われることが多いです。培地上でβ溶血を示すため、培養されることで容易に発見されることがあります。しかし、感染が急速であるため、診断が難しいのが実情です。

症状

ウシが感染した場合、潜伏期間は1日から5日とされ、その後急激な症状が見られます。具体的には、発熱、元気消失、食欲の喪失、反芻の停止などが挙げられます。特に腫瘤の形成が特徴的で、大腿や肩など、筋肉の厚い部位に無痛性の腫瘤が出現します。この腫瘤は冷感を伴い、触診時には捻髪音が聴取されることがあります。進行すると、四肢にも腫瘤ができ、これによって運動機能障害や跛行が生じることもあります。病状は急速に進展し、2日から3日程度で死亡に至る場合が多いのです。

診断方法

気腫疽の診断は、その進行の速さから難易度が高いです。疑いのある場合、特定の検体（筋肉、リンパ節、末梢血、頚静脈血など）に対して直接塗抹標本を作成し、細菌の存在を確認します。確認後、蛍光抗体法を用いることで特異蛍光が観察されれば、ほぼ診断が確定します。しかし、この疾患は急速に進行するため、生前の診断は非常に困難になります。また、類似の疾患としては、牛の炭疽や悪性水腫、牛壊死性腸炎などが挙げられ、迅速な鑑別が要求されます。

治療方法

感染が発見された場合、初期にはペニシリンなどの抗生物質が投与されますが、残念ながらこれが効果的であるとは限りません。感染の段階や重症度により結果が異なるため、早期介入が重要です。

予防策

気腫疽の予防には、気腫疽不活化ワクチンや牛クロストリジウム感染症混合トキソイドが使用されます。これにより、動物に対する感染リスクを低下させることが可能です。特に、家畜が多く飼育されている地域では、ワクチンの接種が推奨されています。

結論

気腫疽は急速に進行し致命的な病気であるため、家畜の健康管理には細心の注意が必要です。世界中の土壌に存在する病原体であるため、特に農場や畜舎内での感染予防策が重要です。感染が疑われる場合にはすぐに獣医師に相談し、適切な診断と治療を受けることが推奨されます。

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