水晶宮

水晶宮の歴史とその影響

水晶宮（すいしょうきゅう、英語: The Crystal Palace）は、1851年にロンドンのハイド・パークで開催された第1回万国博覧会の主会場として設計された画期的な建物です。この建物は、著名な造園家であるジョセフ・パクストンによって設計され、鉄とガラスで構造された巨大なフレームが特徴です。パクストンが提案した設計は、当時としては斬新であり、プレハブ建築の先駆けと見なされています。全体の長さは約563メートル、幅は約124メートルに及ぶ規模は、当時の人々に強い印象を与えました。

設計から建築まで

水晶宮の設計は、1850年3月に公募されたものの、233件の応募案は採用に足りないものでした。そのため、王立委員会が独自の案を発表しましたが、これはドーム型の煉瓦造建築であったため工費や工期の問題があり、評判は芳しくありませんでした。そこで、パクストンが提案した設計が注目を集め、1850年7月15日に委員会の承認を得ることになりました。

パクストンは建築家ではなく、温室の設計で知られていた造園家でしたが、その経験を生かして鉄とガラスを使った建物を設計しました。彼の設計は、標準化されたユニットを使用しており、部品を工場で生産し、迅速に組み立てることが可能であるという革新性を持っていました。このことは、建築におけるプレファブリケーション（プレハブ化）の先駆けとなり、構造物の克服すべき固有の課題に対する解決策を示すものでした。

安全性への懸念と実証試験

水晶宮の構想に対しては多くの懸念が寄せられました。強風や嵐、さらには積雪による荷重に対する不安が広がり、これに応じてパクストンは彼が過去に設計した温室の成功事例をもとに自信を持って反論しました。しかしそれでも、火災や地震、そして多くの観客による荷重と振動に対する懸念が続きました。特に博覧会開催の直前には、原寸大の床組み模型を作成し、兵士たちが集まって床に立つ試験を行ったことで、その強度を実証しました。

1850年7月30日に工事が始まり、1851年1月には完成。それまでの人々の懸念は、工事の進行とともに徐々に薄れました。万博開催後も大きな影響を与えたこの建物は、1854年にシデナムの丘に移設され、さらにスケールアップした新たな施設として、多様な文化イベントや展示が行われました。特に、ウィンター・ガーデンやコンサートホール、様々な博物館などが併設され、多くの人々で賑わっていました。

人気の低下と最終的な運命

しかし、時が経つにつれて水晶宮の人気は徐々に低下し、1870年代にはその影が見え始めました。そして1909年には破産し、その後政府に買い取られることになりました。第一次世界大戦中は軍の施設として使用され、その後も一般公開が 再開されたものの、様々な困難に見舞われました。

遂に1936年、再建された水晶宮は火災によって全焼し、その歴史に幕を下ろしました。現在では、水晶宮という名前はロンドン南郊の地名や、地域の公園、スポーツセンター、そしてクリスタル・パレスFCというサッカークラブによって引き継がれる形で残っています。

水晶宮は、その技術革新や文化的側面からも重要であり、近代建築に多大な影響を与えた事例と言えるでしょう。

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