水木しげる作戦シリーズ

水木しげる作戦シリーズ

『水木しげる作戦シリーズ』は、漫画家・水木しげるが1959年から1960年にかけて兎月書房から刊行した貸本戦記漫画シリーズです。

概要

このシリーズは、主に貸本向けの戦記漫画専門誌『少年戦記』に掲載されました。『少年戦記』は水木しげる自身が責任編集を務めており、本シリーズ以外にも「関谷すすむ」などの別名義で解説記事や短編漫画も掲載していました。

貸本時代の水木しげるは、多くの戦記漫画を手がけていましたが、売れ行きは芳しくありませんでした。そんな折、坂井三郎から「勝つ話でないと子供は見てくれない」というアドバイスを受けます。これをきっかけに「水木しげる作戦シリーズ」を開始したところ、一時的に売れ行きは改善しましたが、負け戦を描くにつれて再び売れ行きは低迷してしまったそうです。

各話あらすじ

印度洋作戦

1959年発行

真珠湾攻撃とマレー沖海戦で勝利した日本軍は、昭和17年3月9日にインド洋作戦を開始します。飛田分隊はハリケーン中隊との空中戦で、早川三飛曹とダグラス中尉が相打ちとなり海へ墜落。しかし二人は奇跡的に生き残り、友情を育みます。ダグラスは早川を空母「赤城」へ送り届け、「戦場で会ったら戦おう」と言い残します。その後、戦艦「榛名」が敵空母「ハーミス」を発見。飛田中隊は「ハーミス」撃沈に向かいますが、そこで早川はダグラスと再会することになります。

ミッドウェー作戦

1959年発行、少年戦記1

昭和17年6月5日、友永大尉率いる攻撃隊は、グラマンと交戦しながらミッドウェー島へ向かいます。南雲中将は第二次攻撃隊に艦船用の爆弾と魚雷を装填させ、報告を待っていました。友永大尉からの「第二次攻撃の要あり」の報告を受け、陸爆への装填が命じられます。しかし、その最中に空母「利根」から「敵空母発見」の報告が入り、急遽魚雷への再装填が始まります。その時、敵の奇襲により空母は次々と失われます。ミッドウェーから戻った友永は、残った僅かな飛行機と燃料で飛び立ち「ヨークタウンを撃沈せり」と最後の無電を残します。

珊瑚海大海戦

1959年発行、少年戦記2 零戦特集号

五代治は戦死した兄の仇を討つため、航空隊に入隊し前線へ向かいます。昭和17年5月8日、珊瑚海で史上初の空母対空母の決戦が始まります。五代は雷撃に成功しますが撃墜され、敵機に助けられます。その操縦士は、戦死したはずの兄でした。兄は捕虜となった後、名誉を守るため敵の作戦に協力していましたが、この海戦で目を負傷し、用済みとして海に落とされ銃殺されます。そして、隊に戻った五代も敵と通じていると疑われ、海へ落とされてしまいます。

急襲ツラギ夜戦

1959年発行、少年戦記3

鈴木二飛曹は、叔父の丹下大佐が艦長を務める第八艦隊旗艦「鳥海」への乗艦を命じられます。間もなく、ガダルカナル島方面にB17が来襲し始め、第八艦隊は夜戦のためツラギへ向かいます。鈴木は突入時刻に敵の頭上に吊光弾を落とす任務を命じられ、敵の攻撃を受けながらも任務を遂行します。負傷した鈴木は助けを求めますが、接戦中の「鳥海」は艦を止めれば集中砲火を浴びると判断し、救助を拒否。鈴木は見捨てられてしまいます。

ケ号作戦裏話 脱出地点

1959年発行、少年戦記4

昭和17年10月25日夜、ソロモン群島のガダルカナル島で、陸軍兵長の真山宗孝ら第二師団は、敵飛行場への最後の攻撃を開始します。白兵戦の末、敵本陣に突入しますが、敵戦車の反撃を受けルンガ河渡河点まで撤退が命じられます。道中、攻撃を受け仲間を失いながらも、真山はなんとかルンガ河渡河点に到達します。そして、ガ島最後の脱出地点であるエスペランス岬のカミンボへ行きますが、そこには何も無く、最後の駆逐艦が出た後でした。真山は取り残されてしまいます。

あ号作戦と南雲中将 前編

1959年発行、少年戦記5

昭和19年5月27日、ビアク島に上陸した米軍を叩くため、第十四航艦隊は南雲中将の指揮下を離れサイパンから南下します。小沢機動部隊と栗田戦艦部隊はビアク島へと前進を開始しますが、その最中にサイパンへの猛攻撃を受け、敵軍の上陸を許してしまいます。「無敵連合艦隊が助けに来る」を合言葉にサイパンの将兵たちは耐えます。豊田連合艦隊司令長官は直ちに「あ号作戦」を発令し、小沢機動部隊と栗田戦艦部隊にサイパンへの北進を命令します。勝利を信じる小沢中将は、偵察機による敵空母発見の報に、アウトレンジ戦法による先制攻撃を開始しますが、発進した攻撃隊からは何の音沙汰もありませんでした。サイパンの南雲中将も報告を待っていました。

あ号作戦と南雲中将 後編

1959年発行、少年戦記6

成功したかに見えた攻撃隊は、敵邀撃機の網に引っかかってしまっていました。日本246機に対し、敵980機による空前の大空中戦が展開されます。さらに米機動部隊は全軍をまとめて日本連合艦隊に迫り、魚雷攻撃により「大鳳」「翔鶴」が沈没。「瑞鶴」「飛鷹」「隼鷹」も攻撃を受け、戦力の大半を失い作戦は失敗に終わります。7月6日午前零時、南雲中将は全軍に玉砕命令を発し、午前5時に自決。そして、全軍は玉砕します。

決戦レイテ湾

第一部 栗田艦隊出発

1959年発行、少年戦記7

もし、栗田艦隊がレイテ湾に突入していたら…。昭和19年10月25日は、アメリカ軍にとって太平洋戦争中の最大の危機だったと言われています。10月22日午前8時、栗田本隊はブルネイを出撃し、25日黎明にレイテ方面に突入すべく出航しました。敵に比島を奪われれば、南方からの補給路は遮断され日本は干上がります。どうあっても比島は手放せず、この一戦には連合艦隊、ひいては日本の運命が賭けられていました。しかし翌23日、栗田中将が乗る旗艦「愛宕」は魚雷4本を受けてしまいます。

第二部 戦艦武蔵の最后

1960年発行、少年戦記8

「愛宕」「摩耶」が沈没。栗田長官は将艦を戦艦「大和」に移し、艦隊の陣容を立て直すと急行します。翌24日、栗田艦隊はサンベルナルジノ海峡で敵機に遭遇します。敵は将旗が掲げてある「大和」を狙いますが、戦艦「武蔵」が三式弾を放って護衛します。「武蔵」は集中攻撃を受け魚雷3本が命中。その後も相次ぐ爆弾、魚雷の命中により速力が低下してしまいます。午後3時、「武蔵」は退陣を命じられます。そして午後7時35分、世界に誇った巨大戦艦「武蔵」はサンベルナルジノ海峡に没しました。

第三部 小沢機動部隊南下す

1960年発行、少年戦記9

今回の作戦は、小沢艦隊が陽動部隊となって敵を引き付け、その間に栗田艦隊が突入するというものでした。そして、西村艦隊は敵艦の弾丸を撃ち尽くさせ、突入を助けるという役割を担っていました。栗田長官は全艦隊の反転を命じます。これを見たハルゼー（米機動部隊）は退却と判断し、全力を小沢艦隊に向け集中させます。敵は囮に引っかかったのです。栗田長官は再び反転、再進撃を命じます。

第四部 西村中将死地に赴く

1960年発行、少年戦記9

西村艦隊は、激しい雷雨の中で敵魚雷をかわしながら、スリガオ水道を目指して突進します。西村中将は栗田長官からの電報で、レイテ湾突入時刻が栗田本隊と7時間もずれがあることを知りますが、進行を続行させます。25日午前2時58分、西村艦隊は敵駆逐艦群に遭遇し「扶桑」「満潮」「山城」に魚雷が命中。オルデンドルフ少将指揮の戦艦・巡洋艦が行く手に立ちふさがり「山城」は猛烈な砲弾を受けます。西村中将は「山城」艦上において、壮絶な戦死を遂げます。

第五部 エンガノ沖海戦

1960年発行、少年戦記10

三方からレイテ湾を目指した艦隊が進んでいる時、小沢機動部隊とハルゼー艦隊の戦闘が開始されようとしていました。栗田艦隊を突入させるため、小沢は体を張って敵を引き付ける覚悟でした。そして、敵機120機が小沢艦隊に殺到。戦闘機で迎え撃つも全て撃ち落とされ、あとは敵の雷爆に身を任せるだけでした。次々と歴戦の空母や軍艦が沈んでいきますが、囮の犠牲作戦は成功します。しかし、設備不備のため電報が通じず、栗田艦隊は孤立無援と観念し、25日午前0時35分にサンベルナルジノ海峡を突破。午前6時45分、米空母部隊との決戦となり、戦艦「大和」「長門」「金剛」「榛名」の巨砲は一斉に火蓋を切ります。

第六部 壮絶特攻

1960年発行、少年戦記11

水上部隊が苦心している時、航空部隊は何をしていたのか。基地航空部隊司令長官として大西滝治郎が着任しますが、使える戦闘機は僅かに30機しかありませんでした。これでは栗田艦隊を護衛し、敵艦隊を撃滅するという任務は遂行できません。そこで大西は「特攻」を決意。関大尉を指揮官に「神風特別攻撃隊」は飛び立ち、敵護衛空母「セントロー」へと激突します。

完結編 サマールの一戦

1960年発行、少年戦記12

10月25日、いよいよレイテ湾に突入という時、栗田艦隊は敵空母部隊に遭遇します。第一、第三戦隊の砲火により敵空母「ガンビアベイ」を撃沈します。その後も煙幕やスコールの中で戦闘が続きますが、一定の成果を挙げたところで追撃を中止。艦隊に集合を命じ、陣容を立て直した栗田艦隊はレイテ湾へ向かいます。だが、栗田長官は考えます…。そして至った結論が「艦隊面舵一杯北進！！」。大回転は栗田長官一人の決断によって、一瞬に決行されました。

関連項目

水木しげる秘話シリーズ

書籍情報

『ああ太平洋 (上) 水木しげる戦記選集』（宙出版、2007年12月、ISBN 9784776794004）
『ああ太平洋 (下) 水木しげる戦記選集』（宙出版、2007年12月、ISBN 9784776794011）
『貸本戦記漫画集(3) 水木しげる作戦シリーズ(上)』（講談社〈水木しげる漫画大全集〉、2015年6月、ISBN 978-4-06-377538-9）
『貸本戦記漫画集(4) 水木しげる作戦シリーズ(下)』（講談社〈水木しげる漫画大全集〉、2015年7月、ISBN 978-4-06-377539-6）

参考書籍

山口信二『水木しげる貸本漫画のすべて』YMブックス、2007年5月。ISBN 978-4-903548-08-1。

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