水路学

水路学とは

水路学は、水域の地理的な特性、特に海図作成に関する学問です。水深、潮汐、海流、海底地形など、航海の安全に不可欠な情報を収集・分析します。歴史的には、航海の安全確保が主な目的でしたが、現在では海洋資源開発や環境保全など、幅広い分野で応用されています。

概要

水路学は、国家機関や国際機関が主導し、精密な調査によってデータを収集しています。これらのデータは、航海用の海図や資料として公開され、船舶の安全な航行に役立てられています。海洋学は、古典的な水路学から派生した科学分野ですが、水路学は特に航海の安全性に重点を置いています。海洋資源の調査や開発においても水路学の応用は不可欠であり、特に炭化水素資源の研究では重要な役割を果たしています。

水路調査は、潮汐や海流、波などの物理的な海洋現象に加え、海底の地形や地質を詳細に調査します。特に、岩礁、砂州、暗礁など、航海の妨げとなる危険箇所に関する情報は、航海の安全を確保する上で非常に重要です。海底調査には、効果的に碇泊できる場所を特定するため、海底の堆積物の種類も含まれます。また、水路学では、海岸線の地形、自然物、人工物など、航海の助けとなる情報も収集します。山や丘、灯台など、船の位置を特定するための目標物も重要な情報となります。

水路測量データは、海図に記載される際に、航海の安全性を考慮した慣習的な表記方法が用いられます。例えば、海図には、実際の海底地形図よりも、航海の安全を確保するための最低水深が強調されます。これにより、船員は危険を回避することができます。しかし、近年では、詳細な海底地形図への需要も高まっており、水路測量データは多目的に活用されるようになっています。

場所によっては、水路測量のデータが海底地形図を作成するのに十分な場合がありますが、航海用海図は安全な航行のための最小水深のみを表示しており、海底の正確な形状を示すものではないことに留意が必要です。航海用海図に記載される水深データは、最も浅い箇所に偏っており、例えば、浅瀬に囲まれた深い場所は、表示されないことがあります。また、色分けされた水深表示は、実際の最小水深を示すものであり、地形図の等高線とは異なります。正確な海底地形を把握するためには、海底地形図を参照する必要があります。

歴史

水路学の歴史は、航海士が作成した海図やメモに始まります。これらの情報は、当初は商業的、軍事的な優位性を保つための秘密情報でした。しかし、次第に海軍などの組織が個人の知識を集約し、共有するようになりました。その後、組織的な情報収集が行われるようになり、水路学の知見は海図や航海指針として出版されるようになりました。

19世紀の画家、ジェームズ・マクニール・ホイッスラーは、海図製作者としての才能を活かし、美しい海岸線の版画を作成しました。これらの版画は、船員が上陸や入港の際に地形を識別するのに役立ちました。

当初、水路測量は、航海中に新しい海域を発見した船によって行われていましたが、技術の進歩と需要の増加に伴い、政府機関や専門の測量会社が委託されるようになりました。しかし近年、技術の低コスト化により、商業的な調査が減少する傾向にあります。現在では、TeamSurvのようなプロジェクトが、低コストでの水路測量に貢献しています。

組織

日本

海軍水路部（旧海軍省水路局）
海上保安庁海洋情報部

世界

世界各国には、専門的な水路測量会社が存在します。国際的な水路測量は、国際水路機関（IHO）が責任を担っています。

英国水路部（UKHO）は、世界で最も歴史のある水路測量機関の一つであり、各国や同盟国の軍事組織、民間企業に海図を提供しています。アメリカでは、アメリカ海洋大気庁（NOAA）の沿岸調査部が水路測量を担当しています。

出典

[1] ジェームズ・マクニール・ホイッスラーによる水路学の仕事の説明：[引用元へのリンク]

関連項目

地図学
自然地理学
チャレンジャー号探検航海
蒸発散
水文学
用水路
仮想水

外部リンク

国際水路機関 (IHO): 航海の安全確保と海洋環境の保護を目的とした国際機関。
The Academy Of Positioning Marine And Bathymetry (APOMAB): 海洋測位に関する議論や、測深に関わる専門家が集まる非営利団体。
International 水路学会連合（旧水路協会）
* ジョージア州立水路サービス

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