水野勝俊

水野勝俊 - 江戸時代前期の大名

水野勝俊（みずの かつとし）は、江戸時代前期の大名として、備後国福山藩の第2代藩主を務めた人物です。彼は水野宗家の2代目であり、初代藩主である水野勝成の長男として、備中国成羽（現在の岡山県高梁市成羽町）に生まれました。母親は三村親成の家に居候していた藤井道斎の娘・お登久です。

幼少期と軍歴

勝俊は慶長3年（1598年）に産声を上げ、幼名は長吉と名付けられました。初めは勝重とも名付けられましたが、正保3年（1646年）に勝俊に改名します。幼い頃から父の勝成に従った彼は、慶長14年（1609年）には11歳で「美作守」に叙任され、さらに大坂の陣に参加して名を挙げました。特に夏の陣では軍功を挙げ、若き武将としての道を歩みます。

元和5年（1619年）、勝成の福山入封に同行し、自身も藩主としての準備を進めました。福島正則の築いた鞆の鞆城に居住していたことから「鞆殿」と呼ばれるようになります。寛永9年（1632年）には熊本藩の改易に際して熊本城の受け取りを任され、さらには寛永15年（1638年）には島原の乱にも参陣し、父と共に戦いました。

藩主としての活動

寛永16年（1639年）、勝俊は42歳で家督を譲られ、それ以降16年間にわたり藩主としての任務を全うしました。彼は父・勝成の事業を引き継ぎ、領地の整備や新田開発に尽力しました。しかし、隠居後の勝成は藩政に介入することがあったため、勝俊がこれに対して苦言を呈すこともありました。特に、福山城下の整備においては、重要な橋である天下橋が架けられ、明治時代にもその役割を果たしました。

勝俊は水野家の歴代藩主の中で唯一日蓮宗に帰依していたことでも知られ、城下の日蓮宗妙政寺の大檀越となっています。彼は他の寺社への庇護も行い、鞆祇園宮に寄進した能舞台は重要文化財として残されています。

人物像と評価

水野勝俊は、その出自からも示唆されるように、庶民に対する深い理解と配慮を持った藩主でした。例えば、福山城下が火災に見舞われた際には、再建を急がせることなく町人に配慮するよう命じました。また、飢饉の際には藩の鷹師による被害を軽減すべく、農民の権利を守る策を講じるなどして多くの支持を得ました。結果として、彼のもとで藩民は支えられ、信頼関係が築かれていきました。

文化面でも熱心であり、能楽や俳諧に親しんだ勝俊は俳人の野々口立圃と親交を深めるなど、藩の文化的発展にも寄与しました。しかし、彼の存在はカリスマ的な父・勝成に overshadow（影を及ぼす）されることもしばしばありました。

寛永17年（1655年）、江戸で他界した勝俊は妙政寺に葬られました。法名は信解院殿前四品作刕太守理円日證大居士であり、その墓は広島県福山市の日蓮宗妙政寺に位置しています。彼はその生涯を通じて家臣や藩民から非常に厚い信任を受けていたことが伺えます。

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