水野忠辰

水野忠辰：改革の志と悲劇の顛末

水野忠辰（みずの ただとき）は、享保9年（1724年）に生まれ、宝暦2年（1752年）に29歳の若さで亡くなった江戸時代の大名です。三河国岡崎藩の第6代藩主であり、忠元系水野家7代当主にあたります。水野忠輝の長男として生まれ、正室は本多忠良の娘を迎えました。

藩政改革への挑戦

当時の岡崎藩は、幕府の要職を歴任することが多かった水野家の影響で財政が逼迫していました。藩主となった忠辰は、この状況を打破するため、まず徹底的な倹約を実行しました。自らも木綿の衣服をまとい、食費を1日100文以内に抑えるなど、率先して質素倹約に努めました。

その結果、藩の財政は徐々に回復し、俸禄の前借を許可したり、藩士の借金を藩が肩代わりするなど、経済的な余裕が生まれていきました。自信を得た忠辰は、次に藩政の改革に着手します。身分に関わらず能力のある者を積極的に登用し、要職に就けました。また、年貢を減免することで農民からの信頼も厚く、領民からの支持を集めました。

挫折と転落

しかし、忠辰の改革は保守派家老たちの強い抵抗に遭い、頓挫してしまいます。改革を阻まれた忠辰は、失望から次第に自暴自棄になり、遊興に耽るようになりました。その変わりように、諫言を続けた生母・順性院は、ついに諫死という悲劇的な結末を迎えます。さらに自暴自棄になった忠辰は、遊女を身請けするなど奇行が目立つようになり、遂には乱心と判断され、宝暦2年（1752年）3月22日に家督を養子の忠任に譲らされ、幽閉されることとなりました。

悲劇的な最期

幽閉された忠辰は、座敷牢で半年も経たない同年8月18日に死去しました。享年29歳。改革の志半ばで、若すぎる死でした。忠辰の血統は、外孫である水野忠光によって女系で維持されることとなります。

墓所と法名

忠辰の墓所は、茨城県結城市山川の万松寺にあります。法号は円覚惟鏡太照院。

系譜

父：水野忠輝
母：松田氏（側室）
正室：本多忠良の娘
子女：水野忠雄（長男）、水野忠任正室、水野忠鼎正室
* 養子：水野忠任（水野守満の次男）

水野騒動

水野忠辰の治世は、その急激な変化から「水野騒動」と呼ばれることもあります。藩政改革への熱意と、その挫折から生まれた転落は、後世に様々な教訓を残しました。

水野忠辰は、藩政改革に果敢に挑みながらも、周囲の状況と自身の心の弱さによって、その志を遂げられなかった悲劇の藩主と言えるでしょう。

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