水野正好

水野 正好（みずの まさよし）は、昭和9年（1934年）8月14日に大阪で生まれ、平成27年（2015年）1月27日に80歳でその生涯を終えた日本の著名な考古学者です。専門は考古学、特に古代史や文化史における宗教考古学や呪術研究でした。奈良大学では名誉教授および学長を務め、また元興寺文化財研究所長などの要職を歴任しました。

大阪府大阪市で育ち、田原本小学校、大阪市立東中学校を経て、昭和28年（1953年）に大阪府立今宮高等学校を卒業しました。その後、昭和32年（1957年）に大阪学芸大学（現大阪教育大学）を卒業。公務員として文化財保護の分野でキャリアをスタートさせ、昭和37年（1962年）には滋賀県教育委員会で日本初の技師となり、文化財行政に携わりました。昭和44年（1969年）からは大阪府教育委員会、昭和49年（1974年）からは文化庁文化財保護部記念物課で主任調査官として活躍しました。

昭和54年（1979年）、奈良大学に文学部文化財学科が新設される際に同学に着任。教育者としても力を発揮し、昭和61年（1986年）から平成2年（1990年）まで文学部長、そして平成6年（1994年）から平成12年（2000年）まで学長として大学運営に貢献しました。学長退任後、平成12年（2000年）には大阪府文化財センター理事長に就任し、平成17年（2005年）に奈良大学を正式に退職しました。

水野氏は、考古学の道に進むにあたり、大学に専門分野の授業が少なかったため、図書館で関連書籍を写して学ぶという異色の独学を重ねました。特に森本六爾の著作に感銘を受け、厳しい生活の中で書籍を購入し私淑したといいます。学生時代から積極的に発掘調査のアルバイトに参加し、飛鳥の川原寺跡など多くの現場で経験を積みました。

その人物像は、誠実で親しみやすい人柄として知られていました。講演活動では、古代の知見を分かりやすく、面白く、情熱的に伝える独特の語り口は「水野節」と呼ばれ、多くの人々に愛されました。また、熱心な愛書家としても知られ、古書店巡りを趣味とし、希少な古書を精力的に収集しました。

教育者としても、千田嘉博氏、相原嘉之氏、西川寿勝氏ら多くの優れた研究者を育てました。西洋美術史家の水野千依氏は長女にあたります。

主な業績としては、『土偶』、『島国の原像』といった単著のほか、『土偶・埴輪』、『邪馬台国と安満宮山古墳』など多数の共編著があります。また、「縄文時代集落復元への基礎的操作」、「埴輪芸能論」、「滋賀郡所住の漢人系帰化民族とその墓制」、「福徳-その心の考古学」、「馬・馬・馬-その語りの考古学-」など、多岐にわたるテーマで多くの重要な論文を発表しました。

学術活動以外にも、平城遷都1300年記念事業協会評議員、飛鳥保存財団評議員会会長、奈良県古都風致審議会会長、日本文化財科学会会長など、多方面で要職を務め、文化財保護や地域文化振興に貢献しました。平成27年（2015年）1月27日、心不全のため80歳で死去。その功績を称え、平成15年（2003年）には水野正好先生古稀記念の論集『續文化財學論集』が刊行されています。関わった遺跡には、与助尾根遺跡、今城塚古墳、上淀廃寺跡などがあります。

水野氏の考古学研究、特に古代の信仰や文化に関する深い洞察と、それを広く伝える情熱的な姿勢は、日本の文化財研究と教育に多大な影響を与えました。

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