水銀柱ミリメートル

水銀柱ミリメートル（mmHg）とは

水銀柱ミリメートル（mmHg）は、圧力の単位の一つです。かつては水銀柱の高さによって定義されていましたが、現在ではパスカル（Pa）というSI単位に基づいて定義されています。この単位は、特に医療分野、とりわけ血圧測定において広く用いられてきました。しかし、SI単位ではないため、国際的には使用が推奨されていません。

定義

日本の計量法では、水銀柱ミリメートルは正確に 101325/760 パスカル（Pa）と定義されています。これは、標準大気圧の1/760に相当し、およそ133.322Paとなります。

歴史的背景

かつて、水銀柱ミリメートルは、高さ1ミリメートルの水銀柱が示す圧力として定義されていました。この定義では、水銀柱ミリメートルとトルは同じ値を持ち、両者は互換性がありました。しかし、現在の定義では、パスカルを基準としています。水銀柱ミリメートルは、初期の精密な圧力計として水銀圧力計に使われ、2つの水銀溜まりの液面差で圧力を測るという仕組みでした。

単位の名称と記号

英語では、"millimetre of mercury"または"millimeter of mercury"と表記されます。日本語では、「水銀柱ミリメートル」または「ミリメートル水銀柱」と訳され、「ミリ水銀」「ミリエイチジー」「ミリメートルエイチジー」と省略されることもあります。単位の記号は「mmHg」であり、大文字と小文字を区別する必要があります。

水銀 圧力計の歴史

水銀圧力計は、初期の精密な圧力計として広く利用されました。しかし、水銀の毒性や、水銀柱の感度が温度や重力加速度の影響を受けることから、現代ではあまり使われなくなりました。水銀に関する水俣条約により、水銀を用いた圧力計の製造・輸出入は原則として2020年までに禁止されています。

水銀柱の高さから圧力を計算する際には、水銀の密度、その場所の重力加速度、そして測定する流体の密度を考慮する必要がありました。かつては、基準となる温度（0℃）と重力加速度（9.80665 m/s²）に基づき、水銀柱ミリメートルの値が計算されていました。しかし、これらの数値は変動する要素であり、現代ではパスカルに基づく定義が採用されています。

SI単位との関係

圧力のSI単位はパスカル（Pa）です。水銀柱ミリメートルはSI単位ではなく、SIと併用される単位でもありません。過去には、国際度量衡局（BIPM）の文書で、水銀柱ミリメートルは他の非SI単位と共に記載されていましたが、現在は削除されています。

各国での利用

一部の国では、水銀柱ミリメートルが血圧測定に用いられています。ヨーロッパでは、1979年の欧州経済共同体（EEC）指令により、mmHgは「血圧および他の体液の圧力」に限定して使用されることが定められました。

日本における使い分け

日本の計量法では、血圧の測定には水銀柱ミリメートルのみを使用することができます。その他の圧力単位は、血圧の測定には使用できません。ただし、パスカル（Pa）とその整数乗倍は使用可能です。生体内圧力の測定には、水銀柱ミリメートルに加えて、水銀柱メートル、水銀柱センチメートル、水柱メートル、水柱センチメートル、水柱ミリメートル、トル、ミリトル、マイクロトルが使用可能です。ただし、真空工学などの分野で使用されるトルは、パスカルに置き換えることが推奨されています。

生体内圧力における恒久使用

「生体内の圧力」測定に使用されていた水銀柱ミリメートルなどの単位は、一時的に使用期限が設けられていましたが、トルやパスカルへの移行が進まないため、使用期限が撤廃され、現在も使用されています。生体内圧力とは、例えば頭蓋内圧力、眼圧、気道内圧、膀胱内圧力などを指します。

他の水銀柱単位

水銀柱ミリメートルと同様に、かつて水銀柱の高さで定義されていた他の単位には、以下のものがあります。

- 水銀柱メートル（mHg）: 101325/0.76 Pa
- 水銀柱センチメートル（cmHg）: 水銀柱メートルの1/100
- 水銀柱インチ（inHg）: 3386.39 Pa

これらの単位も、現在はパスカルから直接的に定義されています。特に、水銀柱インチは、ヤード・ポンド法の単位であり、限られた場合のみ使用が許可されています。

まとめ

水銀柱ミリメートルは、歴史的には水銀柱の高さで定義されていましたが、現在ではパスカルを基準とした圧力の単位として、医療分野を中心に用いられています。しかし、SI単位ではないため、国際的には使用が推奨されておらず、徐々にパスカルへの移行が進められています。日本では、血圧測定や生体内圧力の測定において、特定の状況下で使用が認められていますが、その使用状況には注意が必要です。

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