氷川清話

氷川清話（ひかわせいわ）

『氷川清話』は、幕末から明治にかけて活躍した勝海舟の談話録です。勝は明治20年に伯爵を授けられ、東京市赤坂区氷川町（現在の東京都港区赤坂六丁目）に住んでいたことから「氷川伯」と呼ばれていました。この書名は、彼の通称に由来しています。

出版の経緯

吉本襄によって編集され、『海舟先生 氷川清話』として明治30年（1897年）に出版されました。その後、続編、続々編が相次いで刊行され、明治35年には3冊をまとめた合冊本が出版されました。この談話集は、一般読者にも親しみやすい内容で、広く読まれました。

章題について

初版本には章立てがなく、合冊本も空行で5部に分けられていたのみでした。戦後になり、編者によって章題が付けられるようになりました。以下に、いくつかの例を挙げます。

勝部真長による章題（角川文庫など）：自己の経験について、古今の人物について、日本の政治について、歴史と人生について、など
松浦玲による章題（講談社）：履歴と体験、人物評論、政治今昔談、勇気と胆力、世人百態、など
* 川崎宏による章題（中央公論新社）：立身の数々を語る、古今の人物論、政治家の秘訣、江戸文学の批評、処世の要諦、など

原談話

松浦玲らの調査により、『氷川清話』は、明治26年から明治31年にかけての新聞や雑誌記事から引用されたものであることが判明しました。これらの記事は、勝の談話を基にしており、当時の社会情勢や人物に対する彼の考えを知る上で貴重な資料となっています。

吉本襄による編集の功罪

吉本襄は、原文を大胆に編集し、読みやすい文章に改めました。原文が漢文や文語文であった箇所は口語文に修正され、勝の言葉ではない部分も含まれています。しかし、一方で、勝の談話の新鮮さを保つために、時事的な内容や特定の人物への言及を削除するなど、一部内容が変更されています。

例えば、政治論の最初の文章は、元々は伊藤博文内閣への批判を含んでいましたが、吉本の編集によって、その批判性は薄められています。

勝自身による『氷川清話』への言及

勝自身が『氷川清話』についてどのように語っていたかについては、詳しい記録は残っていません。

戦後の版本

戦後、様々な編者によって『氷川清話』が再編集され、出版されました。代表的なものとして、角川文庫版、講談社文庫版、中公クラシックス版などがあります。これらの版本は、それぞれ異なる視点から『氷川清話』を解釈し、解説を加えています。

国会図書館デジタルコレクション

国立国会図書館のデジタルコレクションでは、戦前に出版された『氷川清話』の刊本を閲覧することができます。

海舟座談について

『海舟座談』は、『氷川清話』とは直接の関係はありませんが、類似の時期に編集された談話録であり、『氷川清話』と比較されることがあります。『海舟座談』は、巌本善治が勝から聞いた談話をまとめたもので、勝の言葉に比較的忠実であると考えられています。

『海舟座談』は、当初『女学雑誌』などに掲載され、後に『海舟餘波』としてまとめられました。その後、岩波文庫に収録され、広く読まれるようになりました。

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