永源寺ダム

永源寺ダムについて

永源寺ダム（えいげんじダム）は滋賀県東近江市にある、淀川水系愛知川に建設された多目的ダムです。このダムは日本有数の穀倉地帯である近江盆地に位置し、農業用水の安定供給を目指して設置されました。

沿革

近江盆地は、古くから稲作が盛んな地域であり、かつては水不足が深刻な問題となっていました。昭和初期まで頻発した農民間の水争いが背景にあり、これを解決するために農林省（現・農林水産省）による灌漑専用ダムの建設が進められました。1952年には愛知川にも灌漑用ダムの計画が持ち上がりますが、初期の予定地では技術的に建設が難しいことが判明しました。そのため、ダムの建設地が変更され、1956年に現在の位置で建設計画が確定しました。

永源寺ダムは、重力式コンクリートダムとロックフィルダムの組み合わせであるコンバインダムで、淀川水系では唯一の存在です。左岸は重力式コンクリート、右岸はロックフィルから成り、高さは73.5mです。主な目的は灌漑と発電であり、関西電力による発電量は5,000kWです。ただし、洪水調節機能は持っていないため、厳密には多目的ダムとは言えません。

1952年の計画開始から完成までには20年を要しました。水没世帯数が213世帯と多かったために補償問題で反対運動が続き、完成は1972年までかかりました。1984年以降は滋賀県の管理に移行しました。

永源寺第2ダム

永源寺ダムの完成後も近江盆地の農地面積は拡大を続け、さらなる水供給の安定化が求められました。1989年、農林水産省近畿農政局により灌漑専用の永源寺第2ダムが計画されましたが、こちらも反対運動が続き、工事が進められない状況です。水需要の減少も影響し、計画は縮小されました。しかし、調査が不足していたことが裁判で判明し、2005年には建設が違法であるとの判決が出ました。最終的に2007年には最高裁によって農林水産省の上告が棄却され、この決定は広範な影響を及ぼしました。

観光

永源寺ダムの下流には、臨済宗永源寺派の本山である永源寺があり、特に紅葉の名所として知られています。2005年にはダム湖が「ダム湖百選」にも選ばれています。また、周辺には桜の木が多数植えられ、お花見スポットとしても人気があります。ただし、周回道路は一部通行止めとなっており、落石の危険があるため注意が必要です。

ダム内では、マムシやヤマカガシといった毒蛇が出没することもあり、訪れる際には十分な注意が求められます。

永源寺ダムは、地元の農業支援だけでなく、観光地としても重要な役割を果たしており、地域の生活と文化に深く根付いています。

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