永納山城

永納山城について

永納山城（えいのうさんじょう）は、愛媛県西条市河原津・楠と今治市孫兵衛作に位置する、永納山（標高132.4メートル）と医王山（標高約130メートル）の山頂に築かれた古代の山城です。この城は、瀬戸内海を見渡せる高縄半島の東端に位置する独立した山塊に築かれており、その歴史的価値から、城跡は国の史跡に指定されています。

城の概要

永納山城は、文献にはその名が記されていない、いわゆる「神籠石系山城」に分類される古代山城の一つです。この城の名称は後世になって付けられたもので、1977年に発見されて以来、数多くの発掘調査が行われています。城は、永納山と医王山の周囲を巡る城壁によって構成されており、その中心は土塁です。城内からは鍛冶関連の遺構が見つかっていますが、城門や水門、その他の内部施設の詳細はまだ解明されていません。出土品としては、鍛冶関連の遺物や土器片などが確認されています。

歴史

永納山城は、文献に記録がないため、築城時期やその性格については不明な点が多く残されています。しかし、天智天皇2年（663年）の白村江の戦い頃、朝鮮半島での緊張が高まった時期に、九州北部や瀬戸内、近畿地方で多くの古代山城が築かれたことから、永納山城もその一つと考えられています。発掘調査では、8世紀初頭から前半頃の土器片が出土しており、少なくともその時期まで城が機能していたことが示唆されています。

古代において、この地域は桑村郡に属し、北方の今治平野は政治的な中心地でした。この地域には、伊予最大の首長墓である相の谷1号墳や、伊予国府の推定地、伊予国分寺、伊予国分尼寺、越智駅などが存在しています。また、道前平野でも古代遺跡の分布が確認されています。古代豪族としては、今治平野では越智氏、道前平野では凡直氏などが知られており、これらの在地豪族が築城に関わった可能性も指摘されています。四国地方には、永納山城の他にも、讃岐国の屋嶋城や城山城といった古代山城が存在します。

近代以降の調査と現状

近代以降、永納山城は以下のような経緯をたどってきました。

1961年：一部専門家による列石の認知。
1977年：旧東予市の遺跡分布調査で列石が発見（記録上正式な発見）。
1977-1978年：第1-2次発掘調査が実施。
2002-2004年度：史跡指定に向けた範囲確認発掘調査が実施。
2005年7月14日：国の史跡に指定。
2006-2011年度：内部施設などの確認発掘調査が実施。
2007年7月26日、2017年2月9日：史跡範囲の追加指定。
2015年度以降：保存に向けた環境整備・発掘調査が継続。
2016年度：愛媛県西条市で第6回古代山城サミットが開催。

現在、城跡は西条市によって環境整備が進められており、その歴史的な価値を後世に伝えるための努力が続けられています。

城の構造

永納山城の城壁は、全長約2.5キロメートルに及びます。城域は東西約470メートル、南北約720メートルで、これは古代山城としては一般的な規模です。城壁は、基本的に土塁で構成されていますが、西部頂上付近では石積み、南東部では自然の岩盤を利用しています。土塁は、列石の上に版築によって築かれており、列石の石材には花崗岩が用いられています。また、石積みは3箇所で確認されており、最大規模のものは幅約20.7メートル、最大高さ約1.8メートルを測ります。城内からは、鍛冶炉や炭置場、金床石などの鍛冶関連遺構が見つかっており、これは古代山城では2例目となる貴重な発見です。そのほか、谷部では水門の存在が推定され、近くには城門の遺構も確認されていますが、いずれも遺存状況が悪く、詳細は不明です。城域からは、飛鳥時代や奈良時代の土器片も出土しています。

文化財としての価値

永納山城跡は、2005年7月14日に国の史跡に指定され、その後、2007年7月26日と2017年2月9日に史跡範囲が追加指定されました。指定範囲面積は合計で406,427.54平方メートルに及びます。

現地情報

所在地は、愛媛県西条市河原津・楠、今治市孫兵衛作に位置しています。アクセスは、JR予讃線の壬生川駅からせとうちバスに乗り、「世田薬師」バス停で下車すると便利です。また、西条市立東予郷土館では、永納山城跡の出土品などが保管・展示されています。