永遠の陽射しの頂

永遠の陽射しの頂（Peak of Eternal Light, PEL）

永遠の陽射しの頂とは、太陽系内の特定の天体において、常に太陽光が当たる地点を指します。この場所は、赤道傾斜角が非常に小さい天体上で、かつ高標高である必要があります。1837年に、天文学者のヴィルヘルム・ベーアとヨハン・ハインリッヒ・メドラーが、地球による食の時を除く限り、月の極に位置する山々が永遠に太陽光に照らされていると述べたことから、その存在が提唱されました。また、1879年にはカミーユ・フラマリオンが、月の極にもこのような場所が存在するだろうと推測しました。

PELの重要な点は、常に太陽エネルギーを供給されることで、電気機器の設置が可能であることです。この特性は、将来的な宇宙開発や宇宙移民において大きな利点と考えられています。特に、安定した温度範囲が保たれるため、さまざまな活動が促進されるでしょう。

月におけるPEL

月における永遠の陽射しを受ける場所を見つけるために、ヨーロッパ宇宙機関（ESA）がスマート1、アメリカ航空宇宙局（NASA）がクレメンタイン、そして日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）がかぐやといったミッションを通じて月の極の詳細な地図を作成してきました。こうした宇宙機は、軌道上で月の極の光を監視し、季節変動を把握し、起伏を詳しく地図化することでPELを特定しました。

ただし、月面上での永遠の陽射しは理論上のものであり、実際には月食などによって太陽光が一時的に遮られることがあります。そのため、「永遠」という表現は多くの場合、大衆的なイメージを描く一環として使われ、実際の太陽光の照射状況を正確に反映するものではありません。月面でのPELは現在も発見されていないものの、多くの山頂が太陰暦の一年のうち約80%以上の期間太陽光を受けているとのシミュレーション結果があります。

月の北極と南極

ジョンズ・ホプキンズ大学の研究チームは、クレメンタイン計画の画像を基に月の北極近くにあるピアリ―クレーター周辺の四つの地点をPELの候補として挙げています。しかし、北半球の夏に撮影されたため、冬の間にこれらが完全に太陽光に晒されるかどうかは確認されていません。かぐやから得たデータにより、ピアリークレーターの頂の一つは一年のうち89%も太陽光を浴びていることが分かりました。

月の南極は非常に大きな窪地で、地表の標高差は最大16kmに達します。NASAとESAのチームは南極周辺の地形を詳細に調査した結果、特に太陽光に露出している尾根が幾つか見つかりました。これらの尾根は永遠の闇に浮かぶ小さな島のように、太陽光を長時間受けられる場所です。これらの地域では、夏のほぼ全期間と冬の70%から90%にわたり、永遠に近い陽射しを享受できるとされています。

水星におけるPEL

水星についてもPELの存在が理論的に示唆されていますが、詳細な地図が未だに作成されていないため、実証が難しい状況です。軌道衛星メッセンジャーのデータが解析されれば、さらなる情報が得られることが期待されています。水星は衛星を持たないため、月のような食が発生せず、既存のデータから新しい発見が生まれる可能性があります。

このように、永遠の陽射しの頂は、宇宙におけるエネルギー供給源として非常に重要な地点となり得るため、今後も研究が進められることが見込まれます。

もう一度検索