汎用ロジックIC

汎用ロジックIC：デジタル回路の基礎部品

汎用ロジックIC（汎用論理IC）は、デジタル回路設計の基本となる論理ゲートやその他の機能ブロックを、小型パッケージに集積した集積回路です。AND、OR、NOT、NAND、NOR、ExORなどの基本的なゲート回路に加え、フリップフロップ、カウンタ、レジスタ、マルチプレクサ、加算器、コンパレータといった、様々なデジタル回路機能を備えています。さらに、バッファやインバータといった信号増幅回路、アナログスイッチやマルチプレクサなどのアナログ回路を含む場合もあります。

これらのICは、複数の論理機能を統合することで、回路設計の簡素化と小型化に大きく貢献しました。

シリーズと標準化

汎用ロジックICは、電源電圧や入出力インターフェースを共通化してシリーズ化されています。代表的なシリーズには、テキサス・インスツルメンツ社のTTL 7400シリーズ、RCA社のCMOS 4000シリーズ、モトローラ（現オン・セミコンダクター）社の14500シリーズなどがあります。これらのシリーズは、事実上の業界標準（デファクトスタンダード）として広く普及し、「標準ロジックIC」と呼ばれています。

各シリーズのICは、機能ごとに部品番号が割り当てられており、動作条件の違いは番号に付加される記号で区別されています。しかし、部品番号とピン配置には必ずしも規則性がないため、詳細な仕様はデータシートを参照する必要があります。

汎用ロジックICの種類と歴史

汎用ロジックICは、その内部回路の構成技術によっていくつかの種類に分類されます。

TTL以前

初期の論理回路には、RTL（抵抗・トランジスタ論理）、DTL（ダイオード・トランジスタ論理）、DCTL（直接結合トランジスタ論理）などがありました。これらの回路は構造がシンプルですが、ノイズに弱く、消費電力が大きく、高速動作が難しいという欠点がありました。現在では、ほとんど使用されなくなっています。

TTL

TTL（トランジスタ・トランジスタ論理）は、1962年にテキサス・インスツルメンツ社によって開発された汎用ロジックICシリーズです。「74」で始まる型番で知られ、標準型（Standard TTL）、高速型（H-TTL）、低消費電力型（L-TTL）、ショットキー型（S-TTL, LS-TTL, ALS-TTL, AS-TTL, F-TTL）など、様々なバリエーションが開発されました。74シリーズは、セカンドソースも多く、広く普及しました。また、軍用規格の54シリーズも存在し、民生用途でも高温・多湿環境で使用されています。

CMOS

CMOS（相補型金属酸化膜半導体）は、低消費電力という特徴を持つ論理回路技術です。RCA社が開発した4000シリーズが初期の標準でしたが、後にTTLとの機能・ピン配置互換性を持つ74C、74HC、74AC、74AHC、74VHC、74LVなど、様々なシリーズが登場し、TTLを置き換えて普及しました。これらのシリーズは電源電圧範囲が異なり、高速、低消費電力、低電圧など、様々な特性を持つ製品が提供されています。

BiCMOS

BiCMOSは、CMOSとTTLの両方の技術を組み合わせた論理回路です。CMOSで低消費電力を実現しつつ、TTLで高速・大電流駆動を実現しています。しかし、製造コストが高いという欠点があります。

IIL

IIL（インジェクタ・インジェクタ論理）は、TTLよりも低消費電力、CMOSよりも高速な論理回路です。CMOSが高速化するまで一時的に使用されました。

非飽和形論理回路

ECL（エミッタ結合論理）は、トランジスタを非飽和領域で使用することで高速動作を実現する論理回路です。消費電力は高いものの、高速性が求められる用途で使用されていましたが、CMOSの高性能化により、使用頻度は減少しています。

汎用ロジックICの機能ブロック

汎用ロジックICは、基本的なゲート回路に加え、様々な機能ブロックを含んでいます。

バッファとインバータ

バッファは、信号を増幅する役割を持ち、インバータは信号を反転させます。これらのICは、バス駆動など、多くの信号を扱う用途で頻繁に使用されます。

NAND/ANDゲート、NOR/ORゲート、ExORゲート

これらは、基本的な論理演算を行うゲート回路です。

フリップフロップとラッチ

フリップフロップとラッチは、信号を記憶する回路です。クロック信号によってデータの保持・変更を制御します。

エンコーダ/デコーダ

エンコーダは複数の入力信号を1つの出力信号に変換し、デコーダはその逆の変換を行います。

データセレクタ（マルチプレクサ/デマルチプレクサ）

複数の入力信号から1つを選択して出力する回路です。

カウンタ

入力パルスをカウントする回路です。同期式と非同期式があり、それぞれ特性が異なります。

レジスタ

データを一時的に記憶する回路です。シフトレジスタは、データをシフトしながら記憶します。

演算器

加算器、比較器、ALU（算術論理演算器）など、様々な演算を行う回路です。

その他

タイマ、パリティチェッカ、PLLなど、様々な機能を持つICがあります。

20世紀から21世紀の動向

LSIの登場により、汎用ロジックICは、大規模集積回路の周辺で信号処理を行う「グルーロジック」としての役割を担いました。しかし、近年はPLD（プログラマブル・ロジック・デバイス）やFPGA（フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ）といった再構成可能なICの普及により、汎用ロジックICの需要は減少しています。現在では、産業機器や軍事機器など、特定の用途で継続して使用されています。また、小型化・低消費電力化が進み、新しいパッケージ形状の製品も登場しています。

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