江口季好

江口季好（えぐち すえよし）：児童詩教育と障害児教育に生涯を捧げた詩人

江口季好は、1925年（大正14年）10月9日に佐賀県諸富町（現在の佐賀市）で生まれ、2014年（平成26年）6月4日に88歳で生涯を閉じました。彼は詩人としてだけでなく、国語教育研究者としても多大な貢献をした人物です。特に、児童詩教育と障害児教育の分野において、その情熱と実践は多くの人々に影響を与えました。

生い立ちと教育

佐賀師範学校を卒業後、早稲田大学文学部に進学。文学への深い造詣を培いました。その後、東京都大田区立池上小学校で17年間、心身障害学級を担当。この経験が、彼の後の障害児教育への取り組みの原点となりました。その後、東京都立大学（1949-2011）で講師を務め、大田区教育委員会社会教育課主事も歴任するなど、教育者としての幅を広げていきました。

児童詩教育への貢献

江口は、児童詩教育の重要性を早くから認識し、その普及に尽力しました。1986年には、日本作文の会編『日本の子どもの詩』全47巻の編集委員長として、サンケイ児童出版文化大賞を受賞。この業績は、子どもの詩の可能性を広く社会に知らしめるものでした。

その他にも、『児童詩の授業』や『児童詩教育入門』など、児童詩教育に関する多くの著書を執筆。理論と実践の両面から児童詩教育を深めました。彼の教育理念は、子どもたちが言葉を通して自己を表現し、豊かな感性を育むことを重視するものでした。

障害児教育への貢献

江口は、障害児教育にも深い関心を抱いていました。池上小学校での心身障害学級担当の経験を基に、『障害をもつ子どもたちの国語教育』や『障害児学級の学習指導計画案集』など、障害児教育に関する数々の著作を発表。これらの著作は、障害を持つ子どもたちの可能性を最大限に引き出すための具体的な方法論を示し、多くの教育関係者から支持を得ました。

また、特別支援学級における国語教育の重要性を強調し、そのための実践的な指導法を提案。彼の活動は、障害を持つ子どもたちが言葉を通して社会とつながり、自己実現を果たすための重要な礎となりました。

受賞歴と晩年

1988年には日本作文の会賞、2000年には社会文化功労賞（日本文化振興会）を受賞。これらの受賞は、彼の長年にわたる教育への貢献を讃えるものでした。

晩年まで教育活動に情熱を注ぎ、2014年6月4日に腎癌のため逝去。彼の遺志は、多くの教育関係者や研究者によって受け継がれています。

主要な著書

江口季好は、数多くの著作を通じて、児童詩教育と障害児教育の発展に貢献しました。以下に主な著書を挙げます。

『児童詩の授業』（明治図書出版、1964）
『児童詩教育入門』（百合出版、1968）
『風、風、吹くな もうひとつの教育論 詩集』（百合出版、1974）
『障害をもつ子どもたちの国語教育 3』（あゆみ出版、1984）
『チューリップのうた 江口季好詩集』（百合出版、1986）
『詩情のある教室 児童詩教育の理論と実践』（エミール社、1991）
『日本の児童表現史』（大月書店、1997）
『特別支援学級の国語(ことば)の授業』（同成社、2010）
『自閉症児とつづる詩・作文』（同成社、2013）

共編著

『日本児童詩集』（寒川道夫共編 太平出版社、1971）
『こくごだいすき』全8巻別巻1（三省堂、1979）
『えんぴつでおしゃべり 子どもの詩』（あゆみ出版、2000）
『新・詩のランドセル 1～6ねん』（らくだ出版、2005）
『子どもの詩から見えるもの』全5巻（駒草出版、2006）

江口季好は、詩人、教育者として、子どもの言葉の力を信じ、その可能性を最大限に引き出す教育を実践しました。彼の業績は、今もなお、多くの教育関係者に影響を与え続けています。

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