江家次第

江家次第（ごうけしだい）

概要

『江家次第』は、平安時代後期に編纂された有職故実書であり、その著者は大江匡房です。この書籍は全21巻から成っており、現存するのは19巻となります。内容には大嘗会や四方拝に関する詳細な記述が含まれており、当時の朝廷の典礼や儀式についての重要な資料と評価されています。

書名と編纂の背景

元々『江次第』と呼ばれていたこの作品は、様々な書籍において「江帥次第」、「江中納言次第」、「匡房卿次第」、「江抄」などの名称で引用されています。正確な編纂の開始時期は明記されていませんが、文献『中外抄』の記述によると、匡房は藤原師通の命令を受けてこの書を編纂したとされています。この作業は、彼が没した天永2年（1111年）まで続けられたと考えられています。その後も加筆や増補が行われ、より詳細な内容が追加されました。

巻の構成

『江家次第』には、全21巻中いくつかの巻が欠落していることが知られています。目録に記載されている第16巻と第21巻は、散逸してしまったか、初めから編まれなかった可能性があると言われています。残っている巻の内訳は次の通りです：

1. 第1巻〜第11巻 - 年中慣例の朝儀
2. 第12巻 - 臨時神事
3. 第13巻 - 臨時仏事
4. 第14巻〜第17巻 - 臨時の朝儀（なお、第16巻には行幸に関する記述がある）
5. 第18巻 - 政務
6. 第19巻 - 弓射・競馬および院中雑務
7. 第20巻 - 臣下の儀礼
8. 第21巻 - 崩御以下の凶事（欠巻）

影響と解釈

『江家次第』は、有職故実書として非常に高く評価されており、その重要性は後世においても認識されています。この文献に対する注釈書も多く、一条兼良の『江次第抄』や、尾崎積興の『江家次第秘抄』などが知られています。現在伝わる本文には、『江次第抄』の一部が混入している部分もあります。

四方拝の呪文

『江家次第』では、天皇が正月元旦の朝に行う四方拝の際に唱えるとされる呪文も記録されています。これらの呪文は「危険や害毒から我が身を守らせてください」という意味があり、天皇の健康や長寿を願う内容となっています。ただし、近年の解釈の中には「危険や害毒が我が身に取り込まれるように」という俗説が存在しますが、これは呪文の正しい読み方とは言えず、誤解に基づくものです。

『江家次第』は単なる歴史的資料ではなく、当時の文化や儀礼、さらには国の安泰を祈念する思いも込められた重要な文献です。今後もその内容の研究が続けられることでしょう。

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