藤原師通

藤原師通（ふじわら の もろみち）

藤原師通は平安時代後期に活躍した公卿であり、従一位、関白、内大臣として知られています。彼は藤原北家に所属し、関白であった藤原師実の嫡男でした。師通の政治家としての業績や彼の人生について詳しく見ていきましょう。

経歴

藤原師通は承保3年（1076年）に、権大納言である藤原俊家の娘である全子を妻に迎えます。彼らの間に生まれた長男、忠実は承暦2年（1078年）のことでしたが、全子とは後に疎遠となり、藤原教通の養女である信子と再婚します。この再婚は、長年続いていた摂家内の主導権争いを和解させる意義があったことが考えられます。その後、師通は寛治8年（1094年）に関白となり、白河上皇の意向に従い、自立した堀河天皇との協力によって積極的な政務を行いました。

当時、院政が定着していなかったため、成人した天皇と関白が連携を強めることで、上皇の権力を抑制することができました。師通は「おりゐのみかどの門に車たつ樣やはある」と述べ、明確に政権の独立性を主張しました。彼は大江匡房から学び、伝統的な官僚機構を掌握する一方で、新興の院近臣勢力に対して警戒感を持っていました。特に、藤原顕季の邸宅を攻撃したという事例もあります。

嘉保2年（1095年）には、延暦寺の日吉社が暴力を用いて源義綱の流罪を求めた際、師通はこれを拒否し、中務丞の源頼治を派遣し衆徒を撃退しました。しかし、その際に発射された矢が僧兵に当たり負傷者が出る事態となり、延暦寺は朝廷に呪詛を行うようになりました。この騒動の影響からか、師通は承徳3年（1099年）に悪瘡に苦しみ、38歳で急死することになります。彼の政権はわずか5年という短期間であったにもかかわらず、彼の死後、摂関家は白河に対する従属を余儀なくされました。

人物像

師通はその性格について、剛直で気が強く、物事の道理を重んじる性格であったと伝えられています。彼の体躯は立派であり、伝説によれば琵琶を弾いた際、その楽器が小さく見えたという言い伝えも残っています。しかし、実際には若い頃から健康が優れなかったようであり、彼の記した日記『後二条師通記』にも体調不良の記録が残されています。それでも日記は亡くなる11日前まで書かれており、突如として訪れた死であったことを物語っています。

官歴

藤原師通の官歴は多彩で、元服は延久4年（1072年）であり、従五位上に叙任されました。多くの重要な役職を歴任し、特に内大臣としての業績が光ります。嘉保3年（1096年）には従一位に昇進し、政界での地位を確立しました。彼の最後は承徳3年（1099年）の薨御であり、享年38歳でした。

系譜

師通の父は藤原師実、母は源麗子です。彼には長男の忠実、次男の家政、三男の家隆を含む数人の子がいました。再婚した妻である信子との間にも子供が誕生しましたが、彼の子孫は政界において様々な影響を持っていました。

師通の生涯は、平安時代後期の政治の中での彼の役割や、摂家の運命を大きく左右する重要なものでした。彼の有能さは高く評価されていましたが、その急な死は摂関家にとって暗い影を落としました。

参考文献

• - 春名好重「藤原師通」、『墨美』106号。
• - 木本好信「後二条師通の儀式観について」、『日本海地域史研究』所収。
• - 中丸貴史『「後二条師通記」論－平安朝〈古記録〉というテクスト－』（和泉書院、2019年）

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