江尻勇

江尻勇：新潟県西山町長、その光と影

江尻勇（えじり いさむ）は、1913年3月18日に生まれ、1997年7月21日に没した日本の政治家です。彼は新潟県西山町（現柏崎市の一部）の町長を6期にわたり務め、その手腕を発揮しました。

生い立ちと初期の経歴

二田尋常高等小学校（現：柏崎市立二田小学校）を卒業後、江尻は上京し、新聞配達や保険外交員として生計を立てました。戦前は刈羽郡二田村役場で戦争事務を担当していましたが、戦後、その職を辞さざるを得なくなりました。

田中角栄との出会いと越山会

1950年代、江尻は日本社会党に関わっていましたが、後に離党。農業に従事していた頃、田中角栄の秘書である本間幸一を通じて、田中土建の手伝いを依頼されます。当時、江尻は三宅正一の応援を始めたばかりであり、農地改革の先頭に立つ三宅を支持していました。その後、日農組織の離合集散を経て、江尻は三宅と同じ新潟3区の小林進を応援し、農業委員会関連の仕事に携わりました。その過程で、寺や地主がいない土地の買収を行い、恨みを買うこともありました。

江尻と田中角栄は同じ二田尋常高等小学校の出身であり、江尻は角栄の後援会である越山会の最高幹部として、角栄をバックに町政を推進しました。彼は越後線の複線化に尽力し、町への企業誘致を積極的に行い、そのために町営住宅団地を周辺よりも安い価格で提供しました。

町長退任と公金流用事件

1988年9月、江尻は町長を退任。翌年には勲四等旭日小綬章を受章しました。しかし、1990年、町長時代の建設会社2社への巨額の公金流用が発覚します。これは、後任の町長である駒野忠夫が、品田建設社長からの融資依頼を拒否したことから明るみに出ました。駒野は公金流用を告白し、辞職。江尻、駒野、町の元収入役、品田建設社長、佐藤組社長が背任容疑で逮捕される事態となりました。

1980年頃から、江尻は収入役と結託し、約28億円もの公金を流用。町の一時借入金制度を悪用し、複数の金融機関から秘密裏に融資を受け、帳簿を操作して品田建設と佐藤組に不正融資を行いました。一般会計予算や税収用の口座預金も流用されていました。江尻と佐藤組社長は遠縁の関係にあり、社長に頼み込まれて不正に手を染め、倒産を防ごうとしたとされています。しかし、品田建設は不正融資の一部を韓国のカジノや競走馬の購入に充てていたとされ、両社は事実上倒産。約15億円が未回収となりました。

江尻は背任罪で起訴され、1992年3月25日には懲役4年6月の実刑判決を受けました。これにより、勲四等旭日小綬章は剥奪されました。この事件は、田中角栄の没落とともに、かつての田中王国の崩壊を象徴するものとして、社会に大きな衝撃を与えました。

その後

1997年7月21日、江尻勇は肺癌のため新潟県柏崎市の病院で死去しました。84歳でした。

江尻勇の生涯は、地方政治の光と影、そして権力と金銭の関係を浮き彫りにするものでした。彼の功績と罪は、新潟県の政治史に深く刻まれています。

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