江戸の検屍官

江戸の検屍官

川田弥一郎による時代推理小説『江戸の検屍官』は、江戸時代を舞台に、検屍を通じて事件の真相に迫る連作シリーズです。作者の川田弥一郎は、時代医療ミステリーというジャンルで多くの作品を手がけており、本作もその一つとして位置づけられます。

あらすじ

物語の主人公は、江戸北町奉行所の同心・北沢彦太郎。彼は、当時の検屍の手引き書であった『無冤録述』を参考に、入念な検屍を行います。彦太郎の相棒となるのは、同じく検屍を得意とする医師の古谷玄海と、死体から生前の似顔絵を再現できる絵師のお月。この個性的な三人組が、難事件に挑んでいく姿が描かれます。

登場人物

北沢彦太郎: 北町奉行所の定町廻り同心。34歳という若さで、検屍に対する情熱は誰にも負けません。その精密さから周囲からは一目置かれていますが、検屍以外の事には無頓着で、「変人」と呼ばれることもあります。
古谷玄海: 町医者であり、彦太郎よりも2歳年上の36歳。彦太郎が絶大な信頼を寄せる検屍の腕前を持ちますが、趣味人でもあり、阿蘭陀語、草双紙、艶本、富本節、漢詩に通じ、特に女遊びを好むため、妻とは絶えず喧嘩が絶えません。
お月: 18歳の女絵師。普段は美人画を描きますが、裏では艶本や残酷絵も手掛けています。人相書きの修行のため、彦太郎に協力するようになります。死者の生前の顔を再現する才能を発揮し、事件解決に貢献します。
磯吉: 彦太郎が個人的に雇っている中間です。
新次: 彦太郎が個人的に雇っている小者です。
お園: 彦太郎の妻で、夫の仕事を理解し支える芯の強い女性です。
お近: 彦太郎の娘です。
おしの: 玄海の女房で、夫の女癖の悪さに悩まされています。
おるい: 玄海の妾で、おしのもその存在を承知しています。
玄朴: 玄海の弟子で、医師見習いです。
青木久蔵: 北町奉行所の臨時廻り同心で、彦太郎より年上のベテランです。
舘仁建: 北町奉行所の吟味方与力で、鬼与力として知られています。
立花伝兵衛: 北町奉行所の同心支配役与力です。

用語解説

無冤録述: 中国の法医学書『洗冤集録』を元に、江戸時代に翻訳された医学書。当時の検屍は、現代のような解剖ができなかったため、死体の外見から死因を判断する必要がありました。この『無冤録述』は、そのための手引書として、作中で重要な役割を果たします。

書誌情報

本作は、複数の出版社から様々な形態で刊行されています。

江戸の検屍官 北町奉行所同心北沢彦太郎謎解き控 (祥伝社、1997年)
銀簪の翳り (読売新聞社、1997年)
江戸の検屍官 闇女 (講談社、2000年)
江戸の検屍官 女地獄 (ハルキ文庫、2001年)

関連作品

川田弥一郎は、『江戸の検屍官』以外にも、検屍をテーマにした作品を執筆しています。

平安京の検屍官 検非違使・坂上元継の謎解き帖 (祥伝社、1998年)
宋の検屍官 中国法医学事件簿 (祥伝社、1999年)
モダン東京の検屍官 銀座カフェ女給連続怪死事件 (双葉社、2001年)

漫画版

『江戸の検屍官』は、高瀬理恵によって漫画化され、『ビッグコミック』で連載されました。漫画版では、原作のストーリーをベースにしつつ、独自の解釈やアレンジが加えられています。

江戸の検屍官 (小学館、ビッグコミックススペシャル、全6巻)

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