吟味方

吟味方（ぎんみかた）とは

吟味方とは、江戸時代の町奉行所に置かれた役職の一つで、現代の裁判官や検察官のような役割を担っていました。主な職務は、出入筋（でいりすじ）と呼ばれる民事訴訟と、吟味筋（ぎんみすじ）と呼ばれる刑事裁判の両方を担当し、事件の審理や容疑者の取り調べを行いました。また、容疑者が自白しない場合には、拷問の申請も行うなど、事件の真相解明に深く関わっていました。

吟味方の構成と役割

吟味方は、与力（よりき）と、同心（どうしん）という身分の役人で構成されていました。与力は10騎、同心は20人が定員でしたが、実際には事件の数や重要度によって変動していました。与力は裁判の審理を行い、同心は容疑者の逮捕や取り調べを担当するなど、役割分担がされていました。

吟味方を務める与力の家柄は次第に固定化される傾向にあり、多くは10代から「見習」として町奉行所に出仕し、親が隠居・退任すれば跡を継ぎ、その後も引き続き吟味方を務めました。

吟味方の業務範囲

町奉行の業務範囲は、原則として江戸の町や町人に係る事件でしたが、吟味方はそれらに加えて、武士に関する事件の吟味を命じられることもありました。また、刑罰については、町奉行と遠国奉行は一定の範囲内で専決できる権限を持っており、これを「手限（てぎり）」と呼びました。ただし、死罪などの重い刑罰を科すには、老中（ろうじゅう）の許可が必要でした。

裁判の流れと吟味方の役割

裁判は、白洲（しらす）と呼ばれる法廷で行われました。町奉行は、最初の審問と判決の言い渡しの際にのみ出席し、それ以外の取り調べは吟味方が担当しました。吟味方は、容疑者を取り調べ、証拠を調べ、事件の真相を解明しました。そして、その結果に基づいて、判決案を作成し、町奉行に提出しました。

出入筋（民事訴訟）の場合

訴訟人が奉行所に訴状を提出すると、吟味方は双方の主張を聞き、証拠を調べ、和解を勧めました。和解が成立しない場合は、判決を下しました。判決に不服がある場合は、上訴することはできず、判決に従わない者は処罰されました。

吟味筋（刑事裁判）の場合

吟味方は、容疑者を逮捕し、取り調べを行いました。取り調べでは、自白を強要するために拷問が行われることもありました。吟味方は、取り調べの結果に基づいて、容疑者の罪状を明らかにし、判決案を作成しました。判決が確定すると、刑が執行されました。

吟味方の心得

吟味方には、高度な法律知識と、冷静な判断力、そして、強い正義感が求められました。また、容疑者から巧みに自白を引き出すためには、優れた話術や心理戦の能力も必要でした。そのため、吟味方は、町奉行所の中でも特に有能な人材が選ばれました。

吟味方のその後

明治時代に入り、近代的な司法制度が導入されると、吟味方は廃止されました。しかし、吟味方が培ってきた裁判のノウハウは、日本の近代司法制度に大きな影響を与えました。例えば、裁判官が証拠を調べ、判決を下すという裁判の基本的な流れは、吟味方の時代から受け継がれています。

まとめ

吟味方は、江戸時代の司法を担った重要な役職でした。彼らは、事件の真相を解明し、公正な裁判を行うために、日々職務に励んでいました。吟味方の存在は、江戸時代の社会秩序を維持する上で、不可欠なものであったと言えるでしょう。

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