江戸京子

江戸京子：日本の音楽界を彩ったピアニストの生涯

1937年生まれの江戸京子氏は、日本の音楽界に多大な貢献をしたピアニストです。名門・お茶の水女子大学附属中学校・高等学校を経て桐朋女子高等学校音楽科を卒業後、フランスへ留学。パリ国立高等音楽院で研鑽を積み、卒業後はアメリカへ渡り、シカゴ交響楽団との共演を果たすなど、国際的な舞台で活躍しました。

卓越した演奏活動に加え、江戸氏は日本の音楽文化の発展にも尽力しました。1979年には室内楽鑑賞会「ムジカ・クラブ」を主宰し、音楽と聴衆の心を繋ぐ場を創出。1985年には、作曲家の石井真木氏や東京藝術大学教授の船山隆氏らと共にアリオン音楽財団を設立し、「東京の夏」音楽祭の芸術監督に就任しました。

「東京の夏」音楽祭では、音楽演奏だけでなく、作家や学者のレクチャーを組み合わせたユニークな企画や、高齢者や身体の不自由な方々にも音楽を楽しんでいただけるよう昼間のコンサート開催など、幅広い層への音楽普及に尽力しました。また、若手音楽家の育成にも力を注ぎ、アリオン賞を制定し、受賞者への長期的な支援を行いました。地方ホールの自主事業サポートや海外文化支援にも携わるなど、その活動は多岐に渡ります。

その活動は国内にとどまりません。数々の国際音楽コンクールの審査員を務め、日本の音楽界を世界に繋ぐ役割も担いました。1986年のチャイコフスキー国際コンクールをはじめ、ジョルジュ・エネスコ国際音楽コンクール、ロン＝ティボー国際コンクールなど、世界的なコンクールで審査員として活躍しました。

日本の文化行政にも深く関わっており、文化庁「文化政策推進会議」委員、日本演奏連盟理事、三井住友海上文化財団理事、朝日新聞文化財団評議員などを歴任。数々の文化活動団体で要職を務め、日本の文化振興に貢献しました。

私生活では、桐朋女子高校時代の同級生である小澤征爾氏と結婚しましたが、後に離婚。しかし、その後も良好な友人関係を維持し、小澤氏はアリオン音楽財団の評議員も務めました。2024年1月23日、老衰のため86歳で逝去。2週間後には小澤氏も他界しました。

数々の賞を受賞し、その功績は高く評価されています。1993年には京都音楽賞特別賞、1998年にはフランス政府から芸術文化勲章オフィシェを授与。1999年には東京都民文化栄誉章を受章、2006年には芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しました。

江戸京子氏は、優れたピアニストとしてのみならず、音楽教育、音楽文化振興に尽力したプロデューサー、そして日本の文化行政に貢献したリーダーとして、日本の音楽界に大きな足跡を残しました。その功績は、これからも日本の音楽界に深く刻まれ続けることでしょう。

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