江戸千家

江戸千家

概要

茶道の流派である江戸千家は、十八世紀後半に活躍した川上不白（かわかみ ふはく）を開祖としています。不白は京都の表千家七代如心斎に師事し、その茶の湯を江戸に広めました。現在の家元は東京都台東区池之端にあり、活発な活動を行っています。流派の門弟組織として不白会があり、関連機関として江戸千家茶の湯研究所が設立されています。江戸千家は、川上不白の茶統を受け継ぐ中心的な存在ですが、不白を流祖と仰ぐ他の流派もいくつか存在し、それぞれが江戸における茶道の歴史に名を残しています。

歴史

川上不白は、紀伊新宮藩に仕える武士の次男として生まれました。藩主の勧めもあり、京都で表千家七代如心斎の門下に入り、茶道をもって身を立てる道を選びます。当時の京都の三千家は、如心斎のもとで大きな改革を進めており、不白はその高弟の一人として、七事式の制定など重要な役割を果たしました。真台子や長盆といった奥秘を授けられた後、不白は寛延三年（一七五〇年）に江戸へ下ります。江戸ではまず神田駿河台に黙雷庵を開き、茶の湯を教え始めました。この頃、深川の豪商であった冬木家に千利休の遺偈が秘蔵されていることが判明し、不白の尽力によって、これが表千家へと返納されています。翌寛延四年（一七五一年）、師である如心斎が没すると、不白は再び上京し、四年間にわたり師の没後の事柄に尽力しました。宝暦五年（一七五五年）に江戸に戻ると、神田明神の境内に蓮華庵を構え、大名や豪商から町人、職人に至るまで、幅広い層の人々に茶の湯を教え広めました。安永二年（一七七三年）に水野家の下組屋敷に隠居した後も、精力的な活動を続け、文化四年（一八〇七年）にその生涯を終えました。

不白の没後、流派は代々江戸において新宮藩や水戸徳川家の茶道師範などを務めながら継承されましたが、幕末には四代蓮華庵（新柳斎）が新宮へ戻ります。明治時代に入り、七代蓮々斎が再び東京（池之端）で茶の家を再興し、江戸千家の中興と称されています。その後、九代名元庵の病により、存命中に長男名心庵宗雪が十代を継承しました。しかし、名元庵没後、実弟の不式庵閑雪も十代を名乗り、江戸千家宗家蓮華庵として独立します。江戸千家宗家蓮華庵側は、宗鶴（八代の妻）が道統であり、閑雪がこれを継承したと説明しています。両者を区別するため、江戸千家（池之端）、江戸千家宗家蓮華庵（弥生町）と呼ぶことがあります。江戸千家宗家蓮華庵には、財団法人江戸千家茶道会、同門組織不白会があります。

不白の茶統を継ぐ他の流れ

川上不白の高弟、川上宗什が浜町に開いた川上家浜町派は、代々久留米藩有馬家の茶道役を務めました。五代蓮心宗順の門下には益田孝（鈍翁）らが名を連ねます。六代素蓮宗順の代に関東大震災で茶室を焼失し一時断絶しますが、七代蓮舟宗順が戦後、杉並区高円寺で表千家不白流として再興しました。一般財団法人不白流白和会があります。このほか、石塚宗通の系統は明治期に岡倉天心と交流があったことで知られ、川上渭白の系統からは岸田劉生の夫人・岸田蓁が六代川上渭白を称し、江戸千家渭白流を再興しています。これらの流派は、それぞれ独自の道を歩みながらも、共通の祖である川上不白が江戸に広めた茶の湯の精神と伝統を受け継いでいます。

歴代

江戸千家、江戸千家宗家蓮華庵、表千家不白流にはそれぞれ歴代が伝えられています。江戸千家宗家蓮華庵の初代から九代は江戸千家と同人物ですが、名や称号が異なる場合があります。

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