江波停留場

江波停留場（えばていりゅうじょう）は、広島県広島市中区江波西一丁目に位置する広島電鉄江波線の終点となる路面電車停留場です。駅にはE6の番号が付与されています。

歴史

江波線の建設は、太平洋戦争中の1943年（昭和18年）に開始されました。これは、軍の要請に応じ、江波地区に建設が進められていた三菱重工業広島造船所への通勤輸送を目的としたものでした。計画は順調に進み、同年12月には舟入本町まで、翌1944年（昭和19年）6月には舟入南町（現在の舟入南停留場付近）まで軌道が延伸されました。しかし、1945年（昭和20年）8月6日に原子爆弾が投下されるという未曽有の事態が発生し、江波線を含む広島電鉄の市内線は深刻な被害を受け、運行が不可能となりました。江波地区まで路線が到達することなく、終戦を迎えることになります。

戦後復興が進む中、江波線は延伸され、1954年（昭和29年）1月に舟入南町から当停留場まで軌道が延び、「江波口停留場（えばぐちていりゅうじょう）」として開業しました。その後、「江波停留場」へと名称が変更された時期については諸説あり、明確には分かっていません。近年では、2008年（平成20年）12月から翌2009年（平成21年）3月にかけて、舟入幸町停留場との間で公共車両優先システム（LRT優先制御）の実験が行われました。また、2013年（平成25年）2月15日には、これまで白島線内での運行が中心だった9号線が、八丁堀経由で本線に直通し、当停留場まで運行区間が延長されるというダイヤ改正が実施されました。2014年（平成26年）3月25日には、停留場の安全性と利便性向上を目的とした改良工事が完了。上下両ホームのかさ上げに加え、特に降車専用だった下りホームには新たに安全地帯が設置されました。これに合わせて、江波終点交差点には電車優先信号も設置されています。

停留場構造

当停留場は、舟入通り上に敷設されてきた江波線の軌道が通りから離れ、少し奥まった路地へと進んだ場所に設けられています。ホームは2面あり、2本の線路を挟んで向かい合う形の相対式ホームとなっています。江波線の軌道はそのまま停留場の先に広がる江波車庫へと繋がっており、車庫の場内に入る手前には折り返しや入出庫に利用されるシーサスポイントが設置されています。

かつて、ホームは歩道と一体化しており、ホーム高が低かったため、超低床車両であっても乗降口との間に段差が生じるなど、利用上の不便がありました。特に下りホームは、安全地帯と呼べる構造物がなく、電車の停車位置に合わせて歩道の一部に柵がない箇所を降車口として使用している状況でした。これらの課題を解消し、利用者の安全を確保するため、2014年の改良工事でホームの構造が見直されました。上下ホームは約15センチメートルかさ上げされ、乗降時の段差が軽減されました。また、下りホームには新たに安全地帯が整備され、より安全に降車できるようになりました。現在、上りホームには屋根が設置されており、雨天時でも安心して電車を待つことができます。

運行系統

江波停留場には、広島電鉄が運行する主要系統のうち、6号線、8号線、9号線が乗り入れています。特に9号線は、2013年のダイヤ改正により、これまで白島線内で完結していた運行が八丁堀から本線を経由して当停留場まで延長され、利便性が向上しました。終点である当停留場は、これらの系統が集まる江波地区の重要な交通結節点となっています。

停留場周辺

停留場の南西側には、広島電鉄の路面電車と広電バスの車庫が併設された江波車庫が広がっています。このバス車庫の敷地内には、地域住民の生活を支えるマックスバリュ江波店も営業しています。江波線が建設される端緒となった三菱重工業の造船所は、現在も三菱重工業広島製作所江波工場として存在しますが、当停留場からは南へ約1キロメートルほど離れた場所に位置しています。計画当初から工場への延伸構想はありましたが、現在に至るまで実現しておらず、工場へ向かうにはバスへの乗り換えが必要となります。その他、周辺には広島県立広島商業高校、広島市立江波中学校、広島市江波山気象館といった公共施設や学校が集まっています。

バス路線

電車の停留場から東側の舟入通り沿いには、広電バスの「江波営業所」バス停が設置されています。このバス停からは、広電バスの6号線が利用可能です。

- 江波営業所バス停（南行き江波三菱前方面）

- 6号線：江波南・江波三菱前・江波栄町方面

- 江波営業所バス停（北行き舟入方面）

- 6号線：加古町・市役所前方面

隣の停留場

広島電鉄 ■江波線
舟入南停留場 (E5) - 江波停留場 (E6)

江波停留場