江藤源次郎

江藤源次郎：アメリカで花開いた日本人画家の生涯

江藤源次郎（えとう げんじろう、1867年4月19日 - 1924年5月8日）は、佐賀県有田町出身の画家であり、有田焼の絵師から転身し、19世紀末に単身渡米、アメリカで画家、挿絵画家、ステージデザイナーとして活躍しました。特に、コネチカット州コスコブのアメリカ印象派画家達にジャポニスムを広めたことで知られています。

生い立ちと渡米

江藤源次郎は、慶応3年（1867年）に肥前国有田（佐賀県有田町）で、有田焼の絵師の家に生まれました。その後、江副家の養子となり絵師としての経験を積みます。明治24年（1891年）24歳で有田焼販売のためニューヨークへ渡ります。1893年のシカゴ万国博覧会では日本館での有田焼の出展を手伝い、アメリカの油彩画に触れる機会を得ました。1894年6月、江副家との養子縁組を解消し片岡姓に戻りますが、ペンネームは「Genjiro Yeto（江藤源次郎）」として活動を続けました。

画家への道

有田焼販売から画家を志すようになった江藤は、1895年、28歳でアート・ステューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークに入学します。ロバート・ブラムやジョン・ヘンリー・トワックトマンに師事し、油絵と印象派の画法を学びました。1896年からは、トワックトマンの誘いでコスコブのホーリーハウスにおけるサマークラスに参加。このコスコブ芸術コロニーは、アメリカ印象派の発祥の地として知られています。西洋画を学ぶ傍ら、アメリカの若い画家たちに日本画の技法を教え、ジャポニスムを広めました。ジョン・トワックトマンやチャイルド・ハッサムといった画家たちも日本の画法を取り入れた作品を残しています。

アメリカでの活動

江藤は、ニューヨーク水彩画クラブ、ナショナル・アカデミー・オブ・デザインなどに出展するなど精力的に活動しました。また、宿主ジョゼフィン・ホーリー夫人の協力で、茶会を開き地元の人々に日本文化を紹介しました。生活のため、野口米次郎やラフカディオ・ハーンの小説の挿絵も手がけています。1900年には、「マダム・バタフライ（蝶々夫人）」劇の文化アドバイザーも務めました。1901年には、キャリア・ギャラリーで初の個展を開催し、水彩画150枚、本の表紙や挿絵40枚などを展示しました。

1904年に一時帰国し結婚。翌年単身渡米し、日本画と印象派を融合させた画法はアメリカ画壇で好評を博しますが、その後は水彩中心の日本画を描くようになります。1906年には、サルマガンディ・クラブ水彩画展でモルガン賞を受賞。肖像画家のトマス・エイキンズの支援も受け、フィラデルフィアで展覧会を開催しました。エイキンズに肖像画を描いてもらいましたが、サインなしで日本に持ち帰ったというエピソードも残っています。

1909年、エイキンズの紹介でブルックリン美術館のステュアート・キューリンを日本で迎え、美術品買い付けを手伝いました。同年再び渡米し、ニューヨークで水彩画展覧会を開催しています。

帰国と晩年

1911年、44歳で帰国し、東京で逓信博物館に勤務。太平洋画会に所属し、国内でも絵を描き続けましたが、アメリカでの成功ほどには評価されませんでした。1912年には、ステュアート・キューリンが再来日した際に美術品収集を手伝いました。1924年、結核のため57歳で死去。グリニッチ歴史協会には、江藤の写真とエルマー・マックレーが描いた肖像画が保存されています。

作品

江藤源次郎は、油彩画、水彩画、エッチング、挿絵など多岐にわたる作品を残しています。代表的な作品には、水彩画の「茶のもてなし」「習字を習う少女」「朝顔」などがあります。また、「My Japanese Wife」「Tama」「A Japanese Nightingale」など、多くの小説の挿絵も手がけています。

江藤源次郎は、アメリカ印象派に影響を与え、日米の文化交流に貢献した先駆的な画家でした。彼の作品は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

参照項目
アメリカの印象派 (American Impressionism)
コスコブ芸術コロニー (Cos Cob Art Colony)

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