江賀寅三

江賀 寅三の生涯

江賀 寅三（えが とらぞう）は、1894年12月5日に北海道山越郡長万部村で生まれたアイヌの偉大な宗教者である。彼はアイヌ名でシアンレㇰ（本当の・叫び）と呼ばれ、聖公会の牧師であり、日本ホーリネス教会の教会員としても知られている。後の人生では、教派を超えた伝道活動にも力を入れ、静内に教会を設立した。

幼少期と教育

寅三は母を早くに亡くし、1902年からは長万部小学校に通い、和人と共に学ぶ混合教育を受けた。彼は当初、親戚の江賀渋次郎の戸籍上の養子として生活していたが、依然として吉良家に住まいを持っていた。1910年には虻田実業補習学校に通い、この学校はアイヌ民族の支援を目的に設立されたものであった。

しかし、1911年に有珠山の噴火が発生し、学校は閉校されてしまう。このころ、寅三は小学校教員としての必要な科目を履修し、1913年には新平賀小学校で代用教員として採用される。また同年には結婚式を挙げたが、1914年の飢饉によってアイヌの人々は深刻な影響を受ける。

牧師への道

1914年9月、寅三は日高教育会主催の養成所で学び、1916年には平取小学校に勤務。しかし、この頃から彼は泥酔することが多くなり、信仰に目覚めた後、1917年には断酒を誓った。彼は「アイヌの父」と呼ばれるジョン・バチェラーのもとで学び、1922年には聖公会平取教会の副牧師となった。

伝道活動の開始

1924年、伝道者としての希望を持つ寅三は柏木聖書学院に入学。1年間の学びの後、日高のアイヌ部落に禁酒村を設計するエスコタン運動を開始。1925年には聖公会を脱会し、ホーリネスの信仰に基づく伝道活動を本格化させた。彼は旭川や樺太に派遣され、数多くのアイヌの人々に布教活動を行った。

社会的貢献

寅三は1930年代にも国籍取得を支援する運動を行い、教会の解散を余儀なくされる模様もあった。それでも1950年代からは法曹界での資格を取得し、生計を立てる一方で、信仰に根ざした活動も続けた。1962年には独立伝道者として再び献身し、1964年にはNHKでの放送を通じてその活動が広まった。

晩年と遺産

1968年、江賀は静内に「新生教会」を設立し、献堂式を行ったが、同年6月28日に逝去した。彼の人生はアイヌの文化と信仰の融合を目指し、教育や伝道を通じて地域に深い影響を与えた。

江賀寅三の存在は、アイヌの人々だけでなく、広く日本社会における宗教的な役割や文化的な重要性を示すものとなった。彼の努力は、アイヌ民族に対する理解を深める一助となった。

もう一度検索