池原謙一郎

池原謙一郎は、1928年に生まれ、2002年に逝去した日本の造園家、環境デザイナー、そしてランドスケープデザインの研究者です。戦後の混乱期から高度経済成長期にかけて、日本の造園・環境デザイン分野において中心的な役割を果たしました。

教育者としては、筑波大学芸術専門学群で長年にわたり教鞭を執り、後進の育成に尽力しました。理論と実践を結びつけ、デザイン思考の重要性を学生たちに伝えました。

デザイナーとしては、従来の公園設計にとらわれず、造形美を追求した芸術的なアプローチを取り入れた作品を数多く生み出しました。彼のデザインは、単なる緑地の整備に留まらず、空間全体の構成や利用者の体験に深く配慮したものでした。代表的な作品としては、東京都の代々木公園（基本構想の原案に関与）や、千葉市の羽衣公園、新潟県の長岡セントラルパークなどがあります。また、入谷南公園の遊具「石の山」など、遊び場のデザインにも斬新なアイデアを盛り込みました。

彼のキャリアは多岐にわたり、建設省や日本住宅公団といった官公庁・公団、そして民間の日本技術開発株式会社を経て、自身の設計事務所「環境計画研究室」を設立しました。同世代の造園家や建築家、デザイナーたちとの連携を重視し、造園設計事務所連合（現在のランドスケープコンサルタンツ協会）の発足にも尽力するなど、業界全体の発展にも貢献しました。

池原謙一郎のユニークな一面として、造園分野以外での活動も挙げられます。熱心なサッカーファンであり、サッカー日本代表を応援するための組織「日本サッカー狂会」を創設しました。また、現在ではバレーボールなどでよく聞かれる応援フレーズ「日本チャ、チャ、チャ」の応援スタイルを考案したことでも知られ、日本のスポーツ文化支援にも情熱を注ぎました。

その功績は高く評価され、日本造園学会賞、日本公園緑地協会北村賞、日本造園学会上原敬二賞など、造園分野における主要な賞を複数受賞しています。

愛知県に生まれた池原は、旧制中学時代に陸上と絵画に親しみ、飛び級で旧制第八高等学校に進学後、東京大学へと進みました。大学ではサッカー部に所属し、卒業後は造園の道へ進みます。東京大学農学部で丹羽鼎三の指導を受けた後、建設省、日本住宅公団などを渡り歩き、設計・計画の実務経験を積みました。その後、日本技術開発株式会社を経て、自身の事務所を設立し、多様なプロジェクトを手がけました。教育者としては東京大学農学部非常勤講師から始まり、東北大学、筑波大学大学院の非常勤講師を経て、筑波大学芸術学群教授に就任し、1992年に退官するまで後進の指導にあたりました。

池原謙一郎は、芸術性豊かなデザイン、幅広い実務経験、そして教育・業界への貢献を通じて、日本の近代ランドスケープデザインの確立と発展に多大な影響を与えた人物と言えるでしょう。彼の墓所は東京都の多磨霊園にあります。

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