池島信平

池島信平：激動の時代を生き抜いた編集者、実業家

池島信平（1909年-1973年）は、日本の編集者、実業家として、特に文藝春秋社における貢献で知られています。その生涯は、大正時代の自由主義教育、戦時下の軍務経験、そして高度経済成長期における出版界の変革と重なり、激動の時代を象徴する人物と言えるでしょう。

教育と青春

東京生まれの池島は、牛乳配達を営む家庭に育ちました。東京府立第五中学校時代には、当時としては珍しい科学教育と国際主義を重視した校風の中で、大正自由主義教育者である伊藤長七校長の影響を強く受けました。この経験は、後年の池島の思考や生き方に大きな影響を与えたとされています。その後、旧制新潟高等学校に進学し、全国高等学校ア式蹴球大会にも出場するなど、学生時代も精力的に活動しました。

文藝春秋での活躍

1933年、東京帝国大学文学部西洋史学科を卒業した池島は、文藝春秋社に入社。当初は『話』編集部に配属され、雑誌記者としてキャリアをスタートさせます。その後『現地報告』の編集長を経て、1944年には文藝春秋編集長に就任しました。しかし、まもなく召集され、海軍に入隊。滑走路建設に従事するなど、過酷な戦争体験をしました。終戦は青森で迎えました。

文藝春秋新社と社長就任

終戦後、菊池寛の意向により文藝春秋社が解散した際には、菊池から社名と誌名を譲り受け、佐々木茂索を社長に迎えて、わずか11名の社員で文藝春秋新社を設立するという、困難な状況を乗り越えました。そして、1966年、池島自身は文藝春秋の第3代社長に就任します。

保守派との関わりと『諸君!』創刊

1960年代後半、全共闘運動の高まりの中で、池島は戦前の全体主義と似た危険性を感じ、保守思想を擁護する立場を取ります。小林秀雄、福田恆存、三島由紀夫ら保守思想家が集う日本文化会議の設立にも大きく関与し、機関誌の発行も計画しましたが、社員からの反発を受けました。その後、1969年には保守派オピニオン誌『諸君!』を創刊。この雑誌は、社会問題への保守的な視点からの論陣を張ることで知られるようになりました。また、「文人海軍の会」を創設し、多くの文人と交流を深めました。

多彩な著作活動

社長としての業務のかたわら、池島は精力的な執筆活動も行っていました。『編集者の発言』、『ジャーナリズムの窓から』、『雑誌記者』など、編集者としての経験や考え方をまとめた著作の他、『歴史好き』など歴史に関する著作も多数残しています。これらの著作は、現在でもジャーナリズムや歴史研究の分野において重要な資料となっています。

急逝とその後

1973年2月13日、社長在職中に急逝。亡くなる直前まで精力的に執筆活動を行っていたと言われています。その死は、日本の出版界に大きな衝撃を与えました。

池島信平の生涯は、激動の時代を生き抜き、出版界に多大な貢献を果たした編集者、実業家としての足跡を示しています。彼の著作や活動は、現代社会を考える上で貴重な示唆を与え続けています。

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